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第110話
アキラたちのように筋肉に負担がかかると麻痺が起こってしまう疾患の場合は、電気刺激にも過剰に反応し、麻痺を起こしてしまうのだ…
しかしその反応時間を測定して病状の進行状態を検査しなくてはいけない…
「それで元気なかったんやな…アキラさん」
なんとなく活気のないアキラに気付いていたのでそう納得するマサキ。
「それだけって訳じゃないけどな…」
首を傾げて答えるアキラ。
そこへ不意に子供が割り込んでくる。
「お兄ちゃん、絵本続き読んで!」
小さい女の子だ、マサキに向かってお願いしている。
「あ、もう少し待ってね。お話すんだら行くから…」
マサキは標準語に直して子どもに優しく伝える。
「マサキ、読んでやりなよ、オレしばらく中庭にいるから、また後で」
そう言うとアキラは点滴台を持って歩き出す。
「え、はい…ほな後で」
マサキは頷き…
とりあえずアキラを見送る。
アキラはそのまま犬達がいる中庭の小屋にくる…
犬達はアキラにすぐ気付いてシッポを振っている。
「…メアリー、リッツ」
呼んで、柵ごしに、点滴で繋がっていない手で犬に触れるアキラ。
「元気にしてたか?誰に餌とか面倒見てもらってるんだろう…やっぱ、健次さんかな…」
ただでさえ忙しいのに…
健次さんに負担かけるのはまずいよな…
「オレが学校卒業して…身体も良くなったら、また、一緒に住む?…引き取ろうかな、こいつら…」
犬達になげかけるように独り言をいう。
一度は自分のもとから引き離した身勝手な飼い主でも…
ちゃんと慕ってくれる。
「お前たちは…離れていても時が経っても、全然変わらないからな…」
軽く微笑むアキラ。
動物はこんなにも純粋で信頼してくれているのに…
人間は欲深で身勝手な生き物…
「はぁ…なんか、色々疲れた…でも、このまま、BOUSから逃げ続けて生きるのは嫌だから…終わらせなきゃな…」
溜息をつきながら思う。
犬たちは大人しく聞いている。
「そのためには…まず、退院しなきゃ…一通り検査して、少しずつ悪くなってるのは分かってるけど…仕方ないしなそれは…」
病気の進行はやはり恐い…
だから検査もあまりしたくない…
はっきりとした数値を見るのが、恐いから…
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