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第116話

ねちねちしつこい社長の言葉に切れて… 「…わかったッ!どっちにしろ、オレがオーケー出さなきゃ電話切らないんだろ!!」 やけになって返事するアキラ。 もう、どうでもいい。 考えたら…みずきのような一途で善人な人間より、そのイカれた野郎の方がオレには似合いだから… 『そうかい、よかったよ…こちらもケガを増やしたいわけではないからねぇ…』 「白々しい…もう尾行なんかするなよ!あと、理不尽なタツたちの撮影、残りは無しにするんだろうな…」 怒りながらアキラは社長に言う。 タツなんかと二度と撮影したくない。 『あぁ、ちゃんと無効にしておくよ…金も支払う。家で撮ったにしてはなかなかいい出来だった、惜しいね…』 金で売ろうとするくせにBOUSを辞めたことを未練がましく言う社長にアキラは… 「代わりはいくらでもいるんだろ!ホント最低だよあんたらは…」 半ば呆れながら怒ったまま言う。 アキラの言葉に怒るでもなくのんびりと話す社長。 『そこでサクちゃんも10年近く働いたんだ…変われないもんだよ、人間はね…さて、契約がまとまり次第連絡するからね。ユウちゃんの自宅でいいのかね?』 連絡先を聞いてくる。 「いや、オレの携帯電話に…」 みずきに知られるのはまずいから… 『わかったよ、くれぐれも裏切らんように…』 そう釘を刺すように言い、社長は電話を切る。 「はぁ…」 受話器を置き、深く溜息をついてしまう。 「なんでオレばっかり…」 面倒なことに巻き込まれなきゃならないのか… 思わないようにしていたが… 自分の運命を本気で呪いたくなる。 沈んだ気分のまま病室へ戻る為、歩きはじめたアキラ。 不意にガラス窓に映る自分の姿を見て… 「髪…切ろっかな…」 ぽそっと呟く… 長く伸びた髪が余計、性別不詳にしているなら… いっそ切ってしまうか… 「でもな…」 中途半端に切ったら、昔の親父そっくりになってしまう自分… それが嫌なアキラ。 「思い切って短く…」 そう思うが…似合わないだろうし… 冬は短いと風邪ひきやすくなるから… 「ま、いいか。問題は髪じゃないしな…」 そう…そんな単純なことじゃなく… 脅されたからって、自分が金で取引されることを… 承諾してしまったことで… ホント情けない…

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