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第117話

「……」 みずきに、このこと… 言うべきかな… 言うとしても…なんて言う? タツたちの撮影を無しにするかわり、自分をある人に売った、だから自分は人のものになったから… みずきとは付き合えない…って言う? みずきはどんな反応するか… 今までの反応から大人しく納得しそうにないし… 割り込んできたりしたら、それこそ困るけど… でも誰かに、自分の状況を伝えたいとも思ってしまう。 弱い心があるのも事実… そして、伝えたいと思い頭をかすめる相手は… ルードでも…ヨシでも、マサキでもない… みずきに伝えたい… 真実を… もう嘘はつきたくないから… 矛盾する心… みずきの影響が…やっぱり自分を弱くしている。 強い心を持ってひとりで生きていかなくてはならないのに… 「難しい…でも、」 それでも、みずきを巻き込む訳にはいかないから… 伝えるわけにはいかない。 アキラは自分の弱い心を叱咤する。 そして晴れない気持ちのまま、病室に戻っていく…。 「あ、アキラ…」 病室に入ると、健次が待っていた。 「健次さん、なに?」 「いえ、部屋にいなかったものですから、点滴は済みましたか?」 「うん」 「熱があるんですから、少し安静にしておいてくださいね」 アキラをベッドに誘導しながら、言い聞かす健次。 「うん、まあ、大丈夫だけど…」 あまり自覚ないアキラはやや首を傾げながら頷く。 「アキラ、そんなだから…なかなか熱も下がらないんですよ」 体調不良を軽んじるアキラに、息をついて言い聞かす。 「はーい、すみません」 健次には素直に謝るアキラ。 「いえ、分かればいいんです」 「うん」 ベッドサイドに座って健次の話を聞く。

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