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第118話
「アキラ、学校は?」
健次も、椅子に座って話し出す。
「もうほとんど休みだからあとは卒業式くらいだよ」
「そうですか、アキラも、もう卒業なのですね。進路は決めているんですか?」
「特に…就職するにしても、やっぱ病気持ちじゃ厳しいし…家でできる翻訳の仕事とか、しようかなとは思ってるけど…アルバイトくらいには」
首を傾げながら話すアキラ。
やはり長時間労働は体力的に難しいから…
「そうですか…困ったことがあれば相談してくださいね」
「うん。そうだ、ここの仕事、書類関係だったら手伝うよ、翻訳とか、資料作りとかパソコンでできるやつなら」
思いついたように言う。
「アキラ…ありがたいですが、無理はしないでくださいね、無理に働かなくとも、難病申請して補助をもらうこともできますから…」
「それはまだ…ッ!」
会話の途中で、不意に俯き右手を抑える。
右腕が全体的に麻痺し始める。
「アキラ?」
「だ、大丈夫…ちょっと腕がまた麻痺して…」
痛みを堪えながら伝える。
「すみません、少し診せてくださいね」
硬く麻痺したアキラの腕を取り、前腕を抑える健次。
「…ッ!」
麻痺してる箇所を、触られるとかなり痛みが増す。
苦痛を表情に出してしまう。
「やはり、痛みますね…では離します、指先は自力で動かせますか?」
「…ッ、ムリ…」
麻痺の最中は…
指先までひきつって痛みがともない自由が利かない…
首を横に振るアキラ。
「腕を伸ばしますよ…」
麻痺して内側に硬く縮まっている腕を、健次はゆっくりさすり、抑えながら伸ばしていく…
「痛ッ、ァッ待ッ」
ビクッと震え…
その動作はかなりの激痛がアキラを襲う…
我慢できず声が漏れる。
「大丈夫ですか?出来るだけ他に力を入れないように…」
一度、動きを止めて…アキラの様子を窺う健次。
「ッ…大丈夫、はぁ」
生つばを飲み込み、息をついて激痛を受ける覚悟を決めるアキラ。
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