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《それぞれの想い》
次の日の昼前…。
健次が院長の楠病院…。
アキラの病室の戸がノックされる。
「はい」
健次さんかと思い返事するアキラだが…
入ってきたのは…
「アキラー、久しぶり!来ちゃった」
「え、ルード?」
「アキラだー可愛いー」
ルードは笑顔で近づき…
ぎゅーっと抱きついてくる。
「ちょ、ルード?」
驚くアキラに…
「ごめんごめんつい、元気そうで良かった」
そう離れながら耳元で囁いて、アキラと瞳を合わせる。
「……」
眩しい金髪に、澄んだ青空のような綺麗な瞳のルード…
一瞬、ドキッとしてしまうアキラ…。
「やっぱ気になったからチャリ飛ばして来てみた、これ!お見舞い!」
ルードはいつもの明るい笑顔を向けながら、持ってきた袋を手渡す。
「ありがと…でも見舞われるほど悪くないんだってオレは…」
やや苦笑いのアキラ。
「はいはい、相変わらずだな」
そんなアキラに微笑む。
「何が?」
「ううん、それ生ものだから気をつけてな」
首を傾げ聞くアキラにルードはさりげなく話を変える。
「なんか作ってくれたのか?」
「そう!開けて見ていいよ」
「これは…」
袋を開くと甘い香りが広がる。
「そ、アップルパイ、冷めても美味いのって考えたらこれかなって…朝作った。アキラ、リンゴ好きだろ?ちゃんと甘さ控えめにしてるからおやつにでもして食ってな」
ルードもイスに座りながら勧める。
「ルード…ありがと、ていうかパイまで作れるんだな、凄いな」
一旦パイをしまいながら感心する。
「んーパイ生地はできてるやつ使ったけどな、和食洋食中華一通り定番マスターしたし、次はデザートかなって、今ハマってる」
「そっか」
「だからまたみんな集めてごちそうしたいんだよな、今一人暮らしだろ、だから手の込んだの作っても張り合いないしなー」
「……」
「マジ、アキラとまた一緒に暮らしたいなーって思ってんだぜ?」
そう笑顔でさらっと誘う。
「ルード」
アキラは答えられず名前を呼んで微笑むだけ…
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