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第5話
洗面所から出てきた彼は、髭も髪も剃ってピカピカしていた。
タンクトップに短パン、スーツ着る前はいつもこんな感じ。別荘にいたときと変わらない服装だった。
パンが焼けるまでまだ20分ある。
「もうちょい待って、まだパン焼けねぇから」
オーブンを眺めながら言う。洗った食器を拭けば、とりあえずひと段落。
布巾を手に取ったところで、彼がキッチンにやってきた。
「いつも朝こんな風に動いてるのか?」
少し驚いた顔をしている。
この時間、いつもなら寝てるからこんなとこ見たことないんだもんな。
「そうだよ、だいたいこんな感じ」
「知らなかったな、早起きして見るもんだ」
すごい感心してるし。
本当だよ、少しは感謝してもらわなくちゃ。
「だろ? こうやってお前の朝飯作ってんだからな」
ぶつくさ言いながら、食器を拭き続ける。
背中の彼の気配を気にすることもなく。
「あと盛り付けもしなきゃなんないから、まだ食えないからな」
俺が食器を置いたのを見計らったように、背中から抱きしめられた。
「ハニーがこんなに俺のために健気に朝から動いてくれてたなんて」
「……ん?」
なんか、予想してたのと違う。
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