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第7話

2018年8月10日PM7:10。 「以上をもちまして、本日のミュージアムツアーは終了となります」  その声は30、40代の落ち着きのある男のものだった。声こそ年相応に深みがあり、鼓膜を揺さ振るようなものだ。どこか艶があるというか、セクシーにすら感じる。 「本日は花火大会前などにおつき合いくださりありがとうございました。本日、皆さまをご案内させていただいたのは当博物館の学芸員で、夏迫(なつさこ)でした」 パリッとしたシャツを着て、やや草臥れた感じの夏迫はいつもの通り、ふわりと笑う。軽く会釈したと、7月の20日や27日がそうであったように、静かな館内へ拍手が沸き起こる。  夏迫の挨拶の通り、20時から打ち上げ予定の花火大会へ行こうと浴衣や甚平に身を包んだ来館者もいて、彼らは次々と館外へ出て行った。 「ふぅ、今日は花火大会だし、微妙かと思ったけど、何とかなったかな」  誰もいなくなり、夏迫も帰り支度を整える。 先程まで夏迫がコンダクターを務めていたミュージアムツアー。気づけば、あと3回を残すところとなり、夏迫は寂しさを感じていた。 「ツアーが終わる。この企画展も終わる。つまり、それが……」 それは夏迫がアーサー氏と別れることでもあった。 ツアー後に筋肉とぜい肉をつけるべく牛肉を食べる。笑ったり、冗談を言ったりするアーサー氏を見ていると、年甲斐もなく嬉しかった。その恵まれた境遇故に叶わなかった夢を思って、やるせない気持ちにもなった。 でも、 「折角なら楽しく過ごしたいよね」  まだ微かに夕日の残る窓を夏迫はちらりと見ると、同じ色に輝く彼の髪を思う。そして、笑顔を作ると、事務室のブラインドを閉め、アーサー氏の待つ展示室へ向かった。

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