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第8話

2018年8月17日PM1:00。 「陶器と磁器の違い。それはその原材料や光の透過性、色、風合い等が違い……」 いつもどこか草臥れたような夏迫はさらに草臥れたような様子で、デスクに向かっていた。 1週間前、花火大会が行われた為に1時間半程、早く始まって、終わった「アーサー・ベル氏のコレクション展」のツアー後。夏迫はアーサー氏を待っていたのだが、彼が夏迫の前に現れることはなかった。 展示室の入口に飾られた18歳のアーサー氏はソファーに掛けたままで、その隣のテーブルへと飾られた薔薇の花は彼を引き立てていた。 「まさか、天国から電車に乗って来てたんじゃあないだろうし」  花火大会の影響とそれとは別件に、電車の異常が見つかったらしく、あの日は博物館の最寄りの駅へ到着する予定の電車は大幅に遅れが出ていたようだ。 「もしかしたら、ツアーが終わる時間が違っていたからかな」  次の展示に向けての勉強をする夏迫の手を止まっていた。実は、今週……つまり今日も変則的なツアーになるとのことだった。 「まさか、電力に影響があるなんて……」  夏迫へそのことが告げられたのは今日……いや、もはや昨日のことで、館長は申し訳ないんだけど、と普段から下がっている眉をさらに下げる。  記録的な猛暑ということもあり、空調に回していった為、ナイトミュージアム用の電力もあと1回が限度とのことだった。 「31日は最終日だけど、夏休み的なことを考えると、24日にした方をナイトの最終日に良いと思うのだけど」  と館長は言い、夏迫も反対はしなかった。 「また会えると良いな……」  こんな時にメールも電話もできない相手というのはもどかしい。結婚まで考えた彼女に別れを告げた時にも思わなかった感情に、夏迫はふっと笑うと、明日の為に寝た。

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