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第9話
2018年8月17日PM5:20。
「以上をもちまして、本日のミュージアムツアーは終了となります」
その声は30、40代の落ち着きのある男のものだった。どこか艶があるというか、セクシーにすら感じる声は続く。
「本日は蝋燭やうちわ作りの後などにおつき合いくださりありがとうございました。本日、皆さまをご案内させていただいたのは当博物館の学芸員で、夏迫(なつさこ)でした」
パリッとしたシャツを着て、やや草臥れた感じの夏迫はいつもの通り、ふわりと笑った。軽く会釈したと、7月の20日や27日、8月10日がそうであったように、静かな館内へ拍手が沸き起こる。
夏迫の挨拶の通り、作ったうちわを持って帰っている来館者もいて、彼らは次々と館外へ出て行った。
「ふぅ、こんなに明るいんじゃ、ナイトもへったくれもないけど……」
博物館のエントランスに少し曲がって掲げられているナイトミュージアムのちらし。そこに大きく『時間変更になりました』と書かれたのを夏迫は眺めると、二重線で変更された時刻に目を向ける。
「すいません、あたしらも帰りますんで」
夏迫がちらしをまっすぐにして、掲示し直していると、うちわや蝋燭作りを指導していたスタッフも引き上げるという。夏迫は「お疲れ様でした」と頭を下げた。
夏迫は彼らを見送ると、展示室でアーサー氏が現れるのを待った……いや、待つまでもなかった。
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