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第6話
「りーくん。どうかした?元気ないけど…お仕事大変?」
「ん?んー…まぁそんなとこ」
ヤバい…見とれてた…さっき水泳の授業でちゃんと拭ききれてない夏南の髪からポタリと滴が落ちてそれが胸元を伝っていった姿を見て息を飲んだ。
もう認めるしかない…俺は夏南に友情以上の感情を持ってる。
いつからだったんだろう?
初めて夏南と会話したあの日?いや…あの日は何とも思わなかった
あの翌日。
「おっ…おはよう…ございます…えっ…と…円山くん」
「はよ。水橋くん…っふふっ…緊張しすぎだよ」
「いやっ…あのっ…えっと…」
おどおどしてる姿が可愛い…
「…小型犬…」
「え?」
「プルプル震えて犬みたい」
「なっ…!ちょっと!酷いよぉ」
「ははっ!あ。ねぇ水橋くん。」
「はいっ!」
「ぷっ…面白っ…」
ぷぅーっと頬を膨らまして怒ってるけどそれさえも可愛い
「名前で呼んでもいい?」
「いいよっ…!!」
「ありがとう。夏南」
呼ぶと耳まで真っ赤にしてぷるぷるしてる
「こーら。璃人。夏南で遊ばないの」
「はよ。琢磨。やぁ。だってさこんな感じって思わなかったからさ。つい。ね?」
「夏南はずっとこんなだよ?」
「え?」
「バイト先一緒なんだよね」
「そうだったんだ。知らなかった。」
「こんなピュアな夏南をお前には紹介できないっしょ?」
「あぁ…まぁ…確かにね。俺だけのけ者かよぉ…寂しいな」
「昨日夏南から話しは聞いたよ。お前人助け出来るんだな」
「俺じゃねぇよ…円山の看板効果。俺は声かけただけだし」
「でも!!でも…あのとき円山くんがいなかったら俺はどうなってたかわかんないから。声かけただけだろうけど!俺にとっては…俺にとってはすっごく…すっごく嬉しかったから!助けてくれたのが円山くんで良かったって思ったから。家の看板だけじゃ声をかけるなんてきっと出来ないはずだから。璃人くんだからできたって思うから…だから。ありがとう」
「…っ…琢磨…この生き物なんだろう…可愛いんだけど」
俺を…円山の息子でなく璃人として見てくれた…それが堪らなく嬉しかった…
「だろ?」
「ちょっ…たーくん…」
「へぇ~…たーくん…ね?」
この時胸の奥がつきんと傷んだ。これまでずっと一緒にいた琢磨が他に取られた気がしたから?
いや…多分…嫉妬…
俺の知らない夏南のこと琢磨がより近くにいて知ってるんだって思ったら…こう…胸がざわめいたんだ…
「その呼び方…可愛い…俺のこともそんな感じで呼んでみてよ」
「えぇ!!??…えっと…りーくん」
「っ…」
ヤバい…鼻血出そう…
「璃人…顔崩れてる…大丈夫か?」
「初めての呼ばれ方に照れちゃった。これからもそう呼んでよ。」
恋に落ちるのはこんなにも簡単…でも相手は親友の友人…男…俺のタイプとはかけ離れている人…
でも…円山の看板でなく俺個人を見てくれたのは琢磨以来で…
素直に嬉しくて…夏南のそばにずっといたいと思ったんだ
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