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第30話

夏南side 「…わかった…ありがとう…」 それから俺は独り暮らし。 父は約束通り月に一度は会いに来る。母も来たがるがそこは父がうまいこと誤魔化していたようだ。 その代わり毎日同じ時間に電話が来る。 たまに母は俺と春太の違いに戸惑い発狂することもあるみたい。 そんな日々が続き春太がいなくなって丁度一年。同じ日に母は死んだ。 春太の死んだあの雨の日みたいに強い雨が降っていた ふらふらと外に出た母。 多分会いに来ようとしたんだろう。春太に。 同じ交差点で母は跳ねられ亡くなった。 「夏南…母さんが亡くなった…」 「そんな…」 「これでお前を解放してやれる…私は最低だな…悲しみだってある…でも…何だかホッとしたんだ…夏南…どうする?帰ってくるか?」 「…帰らない…」 「わかった。また会いに行くから…」 「うん…側にいられなくてごめんね」 こうして、俺は春太をマネ明るく元気に過ごすようになった。 新しいことをしたくてバイトも始めた。 そして父の希望で高校にも進んだ。 高校では努力したかいがあったのかそれなりに友達だって出来た。 バイト先の人もみんな優しくしてくれた。 そんなとき出会ったのがたーくん。初めて見たときあまりにも綺麗でみとれた。存在は知ってたけど遠目で見ていただけだった。たーくんの隣にはいつも同じ友達がいた。学年首席の円山くん。二人ともとても目立つから有名だった。彼らが俺を知ることなんてないだろうけど 「今日からよろしくお願いします」 「琢磨は夏南について仕事教えてもらって」 同い年で学校も同じだったから店長の配慮だろう。 「水橋 夏南くんだよね?」 「え?俺のこと知ってるの?」 「うん。有名だよ?可愛いからって」 「え?そうなの?」 「俺可愛い子チェックしてるから。これからよろしくね。夏南」 「よ…よろしくね。琢磨くん」 たーくんは覚えが早くて俺がすることなんてほとんどなかった。 バイト先でしか話せないけれど学校とは違う雰囲気のたーくんと仲良くなれたことは嬉しかった。 こんなたーくんみんな知らないよね?なんだか優越感。 それと同時に既視感も覚えてた。話し方や接し方が似てたんだ…春太に。 「夏南!!どうした?なんで泣いてるの?」 その日は春太の命日だった。 「ん…たーくんらみてたら…思い出しちゃって…」 春太のことを話すとたーくんは複雑そうだけど柔らかく微笑んで春太がしてくれたみたいに頭を撫でてくれた。 「頑張ってきたんだね。夏南は。えらいね」 「たーくん…」 「夏南はいい子だから必ず見てくれる人がいるよ。だから…笑って?」

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