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第56話

「めのさんはこの辺りに来たのって初めて?」 「初めてだよ。でもこんな感じのところに住んでたことがあって…すごく懐かしい…」 「昨日は何を思い泣いていたの?その頃のこと?」 聞いてはいけない気もしたが出てしまったものを無かったことにすることなんて出来ない… 「めのさん?」 「それはまたゆっくりでもいい?」 「ごめん」 「…」 「ごめん…めのさん」 「いえ。大丈夫。ありがとう。心配してくれたんでしょ?」 「泣いてるめのさんが…すごくきれいだった」 「何それ」 「笑ってるめのさんも喘ぐめのさんも綺麗」 「りとさんに言われてもねぇ」 「俺…もっと素直になりたい…わがまま言いたい。だから付き合ってよ。俺のわがままに」 「いいですよ。私は貴方の使用人ですから」 「うわぁ…その言い方…距離あるし」 「嘘だよ。何でもいって。他にあまり頼らないりとさん甘やかすの優越感に浸れそう」 「そうでしょ?」 二人で何でもない話をしながら時は過ぎていく。 こんなに穏やかに過ごしたのは久しぶり。 夏南の前ではカッコいい自分でいたくて必死だったから…

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