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第62話

瑪瑙side 豪さんとの交際は10年程続いていた。本当に毎日が幸せで…来年の春には籍を入れようとずいぶん前から言われてて…繁忙期が終わったらその返事をするつもりだった…勿論そうしたいと言うつもりで… それなのに突如終わりがやってきた… 「瑪瑙。別れて」 「え?何?急に…」 「もう耐えられない…」 「どういうこと?」 「だって…お前は…俺じゃなくてもいいでしょ?プロポーズだってそのまま流した…お前は誰にだって好かれる…誰にでも優しいお前を見ていると不安になる…俺ね。別に好きな人出来た。紹介するね。拓斗」 「拓斗…」 拓斗は俺の同期で切磋琢磨しながら働いてきた俺の親友でもありよきライバルでもあった。 「ごめんね。瑪瑙。俺は前から豪さんのこと好きだったんだ。お前と親友やってれば側にいられる…側にいられるだけでいい…そう思ってた。だからお前とも一緒にいたんだ…。でもごめん。もう我慢できなかった…だって瑪瑙は豪さんがいるのに回りにも優しくして…豪さんを優先にしたことないでしょ?…プロポーズだってすぐにOKしなかった。それが豪さんを苦しめてきたんだよ…豪さんが不安になってるの気付いてた?気付いてないでしょ?お前の優しさが豪さんを苦しめてきた…俺は豪さんのことが一番だし豪さんと幸せになりたい。豪さんじゃなきゃだめなんだ…ごめんね。」 恋人と親友を同時に失った俺はただ立ち尽くすしかなかった… それと同時期に病気療養していた店のオーナーが亡くなりその後豪さんと何も話せないまま皆バラバラになった。 その時両親も体調を崩したため新たな店へは辞退を申し出た。 一度に全てを失った… … 「それって…」 「そう。君とほとんど同じ理由で同じ時期にフラれてる」 「メノさん…苦しかったね…」 「ん…でも…ここにこれて…リトさんに会えて良かった…リトさんのお陰で…立ち直れそうだよ」 「よかった…少しでも役に立てたのなら…」 その後、りとさんは俺をまた優しく抱いてくれた…豪さんとは違う温もり…でも不思議と安心できて…身を委ねることが怖くなかった。 俺たちは似た者同士で…きっと偶然じゃなく必然な出会いだった… 今は願える…豪さんと拓斗が幸せでありますようにって…きっとこれも、りとさんのお陰。 りとさんも少しでも傷が癒えていたらいいのに…

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