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第85話

次につれてきたのは俺のよく来るショップ。美空くんの帰りの服があの服だけではあんまりかな?と思ったからプレゼントしようと思ってた。 「こんにちは。成兼さま。」 「こんにちは。小金井さん」 この店でも若手だがファッションセンスがずば抜けていい小金井さん。俺の担当の方が海外へ異動になったため紹介された。前の担当に直接教えを請うていたから俺の好みのものは熟知していた。 「今日はこの子のコーディネートお願いしたいんだけど」 「かしこまりました」 お手本のような礼をして小金井さんか服を何着も手にして運んでくる 「り…璃人さん…俺…」 こんな店は初めてなのか美空くんが緊張のあまり本人も気づいていないけど俺の服の裾をそっと掴んでいた。 「大丈夫だよ」 その美空くんに声をかけ頭を撫でるがこれもまた気付かないらしい その姿が可愛くて見詰めていたら小金井さんが戻ってきた 「お待たせしました」 「試着しておいで」 美空くんをフィッティングルームへ送り出し小金井さんと談笑しながら待つ。おずおずと顔を除かせたのを見て小金井さんがゆっくり扉を開いた 「さすが小金井さん。とてもいいね」 流石だ。俺の好みも取り入れながら美空くんらしさも残している。 「ありがとうございます」 「次も着てみて。…ん~これね」 「え?あ。はい。」 戸惑いながら次々と試着していく。どれもとてと似合っていたから選べない…だったら… 「ん~…悩むなあ…これ全部下さい!」 「え!!だめですよ!!俺生活…」 「大丈夫だって。俺からのプレゼント」 「いやいやいやいや!!いただけません!!」 「ん?どうして?俺の言うこと聞けないの?」 耳許で囁くと不安げに見上げる。またこの顔させちゃった。 「貰ってくれる?」 「はい」 何か…ごめんね。俺の好みになっちゃって…でも…これも明日で終わり…恋人らしくプレゼントしたかったんだ…ねぇ…美空くん…たまには思い出してくれる? それは願っちゃいけないことなのに願ってしまう。 もっと早く出会いたかった…違う形で。 そしたら俺は精一杯努力して君の心を掴みにいったのに。 君の心は芙蓉さんに囚われたまま…芙蓉さんは以前うちで働いていた女性に好意を持っていると聞いたことはあるけれどきっとそれは芙蓉さんの勘違い…芙蓉さんは既に美空くんに囚われているはずだ。本人は気付いていないがそうじゃないとここまで必死で美空くんを守ろうなんてしないはずだから…あの部署を潰すために美空くんを利用しているはずだから… 「美空くん。ありがとう」 「え?何がです?」 「ん?一緒に過ごしてくれて。ありがとう。プレゼントさせてくれてありがとう。出会わせてくれてありがとう…」 「璃人さん?」 「今日楽しかったからね。ありがとう」 急に礼を言う俺を不思議そうに見詰めて頷いてくれた。ほんのりら染まった頬が可愛い… キス…したいな…抱き締めたいな…そんな欲望を精一杯圧し殺しながら笑顔を向けた

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