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第87話

それでもずっと見詰めてくる彼に少し悪戯をしてみようと側に行く。寄ったのにまだぼんやりしている彼に苦笑する。 「もう…美空くん…見過ぎ…」 その柔らかそうな唇に吸い付いた。一瞬のふれあい…でも、とても幸せな気分だった。 「あっ…」 驚いたように我に返る美空くんの瞳を除き混む。 「ごめん。嫌だった?」 「驚いただけ…」 「そんなに見詰めるからつい…ね。俺も一緒に浸かっていい?」 「はい」 二人で入るにも十分な広さの湯船に二人して並んで浸かる。暴れだしそうな欲望を必死に押さえながら言葉を紡ぐ 「美空くん。明日はお父さん帰るでしょ?」 「はい」 「寂しいなぁ…」 「何ですかそれ」 「何時に帰るの?」 「夕方。17時頃と言ってましたけど…その時間に帰れるといいけどな…」 17:00頃…それに間に合わせることは可能だ。今日で全ての決着をつける… 「大丈夫だよ」 この言葉に色んな思いをを乗せる。 ちゃんと家に帰してあげる もうお父さんとのことは終わりにする お父さんの会社とは契約は切らない こちらから謝罪する やつらを二度と君たち親子に近付けさせない …たくさんの大丈夫を叶えて見せるから… 「美空くん先あがりな。のぼせちゃうよ」 「え?あ…はい…」 「ん?」 美空くんが不思議そうな顔をしている…この顔何度見たかな…抱かないって…決めてるの。だからそんな顔しないで 「あ…いえ…」 「着替え置いておいたから」 暫くして俺も上がるとソファーでうとうとしている彼を見つけた。本当に…無防備… 「美空くん。風邪引いちゃうよ」 「んっ…おかえりなさい…璃人さん…」 「また髪乾かしてないし…世話が焼けるなぁ」 触れるのは最後。柔らかい髪を乾かしてあげると気持ち良さそうな顔。この顔やっぱり好きだなぁ… 「よいしょ」 乾かし終わると今度は彼を横抱きにして寝室へ運ぶ 「おやすみ。美空くん」 そのまま出ていこうとすると俺の服の裾をきゅっと掴んだ 「どうしたの?」 「お仕事?」 「うん。」 「そう…」 「何?寂しい?」 「うん…」 破壊力…凄い…でも…俺は…

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