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第88話

尚も俺を見つめ続ける美空くんに手を伸ばす 「っ…美空くん…それは…ダメ…」 「だって…」 「勘違いしちゃうでしょ」 「…だって…脅してきたくせに何もしないからかえって…」 「怖い?」 「…」 無言で頷く美空くんの隣に腰掛け抱き締める… 「はぁ…もう…可愛い…」 「可愛くない…」 彼にとって俺は脅して連れてきた相手だ。何もしないことが怖いのもわからなくはない。でも…だめだから… 「ねぇ。美空くん」 「…」 「俺さ…本気になっちゃったみたい…君のこと…だから…」 君にとってはたった2日一緒に過ごした相手というだけ…でも俺はもう長く君の事を思っていたんだ…だからこそ見えたものもあるから…だから… 「だからさ…簡単に手を出せなくなった…君には好きな人がいるよね?お父さんとのことで諦めた人…」 「何で…それを…」 「調べている内に…だから…俺は絶対に君を好きにならないって決めていたし好きになるわけがないと思ってた…でも…だめだった…君の沢山の表情見てたら…」 少しの嘘を織り混ぜながら君に… 「璃人さん…」 「男なんて真っ平って思っていたのに…それなのに…」 どうしてまたこんなにも引かれる相手が男で他の人を思う彼だったんだろう…もう繰り返したくない…好きだから…手を出せない…怖いんだ…君はここで俺に抱かれたらもっと自分を汚らわしいものだって思って無理矢理芙蓉さんを諦めるんでしょ? どうして?どうして、思い会う二人の邪魔をできる?芙蓉さんは俺の大切な友人…そう…琢磨のような存在…その彼が思うのが君で… …あぁ…結局俺はまだ捕らえられているんだ…琢磨と夏南に… 「美空くん。明日からきっと大きく変わるから…だから…今日で最後…」 もう…君には会わない…この気持ちはこれ以上大きくしない… 傷付きたくない… 「え?」 「またどこかで偶然にでも出会わないと会えない…だから…勘違いさせないで?…」 「璃人さん…璃人さんなら…いいよ…ねぇ…抱いてよ。」 「でも…ダメ。きっと後悔するから…ね?だから…」 「俺は…今…あなたに抱かれたい…」 きっと自分なんてこれ以上誰と何をしようと同じだと感じてるんでしょ? どうせ汚いんだからって…本当に…おバカさんなんだから… 「ダメだよ…美空くん」 「だって…俺だけ沢山貰ったのに俺は…」 「いいんだよ。君の笑顔が見られた。それで十分」 本当に…もう十分だよ… 「璃人さん…」 これ以上彼の声を聞いていたら…伸ばす手を取ってしまったらきっと俺はめちゃくちゃに犯してしまう…だから無理矢理話を切り上げて背を向けた 「俺は仕事してくるね。おやすみ」 追っては来なかった…良かった…追ってこられたらきっと…もう…我慢できなかった 「もう…何であんなに優しいの…」 涙があとからあとから溢れて止まらなかった… 「大好きだよ…美空くん」 …だから…自分をこれ以上傷つけないで…ちゃんと…自分を大切にして…幸せになって… そうして言い逃れのできない証拠たちを集め父と芙蓉さんに送信した。 これで俺の役目は終わった…これで彼らを脅かす者はいない…

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