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第91話

「こんにちは」 「いらっしゃい」 下の扉を開ける前に気付いてた隣にいる存在… 「何で…美空くんと?」 よかった…顔色良くなってる…少しふっくらしたかな? 「水無月があなたに用があると言ったから」 …あぁ…そっか…俺が何者かわかったのかな?…真っ直ぐな彼だからきっと謝罪でもしたいのだろう 「…あの…」 少し気まずそうに…そして芙蓉さんとの関係を気にしてるのかそわそわした感じでそこにいる美空くんはやっぱり可愛くて…胸が高鳴る… 「あぁ…うん…まぁ二人ともあがって」 ソファーに腰かけてもらって飲み物を準備している間美空くんと芙蓉さんの間には何の会話もなくて…カップのぶつかる小さな音とコーヒーの落ちる音だけが響いていた。 1つ息を吐きトレイにのせて運ぶ。 近づいてきた俺を子犬みたいにうるうると大きな目で見上げる美空くんに悶えそうになるのを耐える 「…」 「まさか…美空くんが訪ねてくるとは思ってなかったよ」 「…俺も…先輩と知り合いなんて…知らなかったです…だって…あのときは…」 そうだよね。初めてナンパしたとき助けてくれたのは彼だったから。でも芙蓉さんの中の俺のイメージとは全く違ったし日も陰っていたし目の前の女の子を助ける使命感で俺のことはちゃんと見なかったのだろう。ただただ怯えてた彼女を心配して彼女を見つめていたはずだから 「まぁ…いろいろあってね」 美空くんの耳に唇を寄せ尋ねる 「女装のことは話してる?」 「…」 無言で首を横に振る。だったらどうやってあのとき彼をここにつれてこられたのかの説明も少し誤魔化さないといけない。きっと芙蓉さんはその事も聞きたかったはずだから それを見て頷いて芙蓉さんへ視線をやる。 何かを察したのか彼が口を開いた。 「あのときはありがとうございました。水無月を守ってくれて」 「え?」 芙蓉さんが動いていたことはしらなかったのだろう。だから今彼は混乱している。だから… 「…お父さんのことでここにきたんでしょ?美空くんは」 「はい…あの…俺…まさかあなたが円山の次期社長なんて知らなくて…」 「でもね。ちょっと勘違いしてる」 「え?」 「データを先に見つけたのは俺じゃない」 「え?」 そう。本当の救世主は芙蓉さんなんだよ。だから…俺は何もしてない… 「…皆にも話してないこと…お前には話すよ」

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