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第96話
二人の家を訪れてからはたまに連絡を取り合ったり一緒に飲みに出掛けたり出来るようになった。そしてまた時が過ぎて…
不思議な位胸は痛まないし二人の間にある深い絆を感じ取れて俺まで幸せ気分になれた。
「りーくん」
「ん?」
「あのさ…男の妊娠ってどう思う?」
「今話題のやつ?」
長年研究されてきていた男性が妊娠できる新薬の動物実験が成功したと言う話題。
「あのね…この間国からね臨床実験の被験者にならないかって手紙が届いたんだ。男性同士のところにランダムに送られてくるみたいなんだけどね」
「…うん。で。琢磨は何て?」
「確かに子供は欲しいけれど何かあったらって思うと賛成できないって」
「そうだろうね。夏南はどうしたい?」
「俺は…それを受けたいの。たーくんとの子供ほしい…もし、出来なかったとしても…やらないで後悔するよりやって後悔したいの」
「琢磨としっかり話し合ってごらん。自分の思いをちゃんと伝えておいで。その問題は俺がどうこう言える立場ではないからね」
「りーくんだったらどうする?」
「俺はパートナーの意思を尊重する。母親になるパートナーの気持ちが一番大切だから。負担はそっちの方が大きいし」
「わかった…話してみるね」
それから数日後…しっかり話し合った結果夏南は被験者となることを決めた。
「…璃人…俺…不安…」
「琢磨。夏南はもっと不安なはずだよ。だから今一番側にいないとならないよ。ね?ほら。顔あげて。これから面談なんでしょ?」
「うん…」
「夏南待ってるよ」
「先にね母体となる人の面談があってそれから一時間位したらパートナーも話聞けるんだって。だからもう少し一緒にいて」
あんなに長く一緒にいたのにこんなに弱々しい琢磨は初めてみた
「琢磨。らしくないよぉ。ほら。過去の栄光思い出して。演じてみたら楽になるかもよ。そんな顔してたら夏南の不安あおっちゃうよ。だから…ね?」
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