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第101話
各部屋で作るものが違うので一通り説明をする
美空くんは既に芙蓉さんへのプレゼント作りに入っていた。真剣な眼差しはやっぱり綺麗。本当に芙蓉さんのことが大切なんだなって思うと自然に笑みがこぼれる。あの時の俺は間違ってなかった。そう、思うとホッとした。その部屋を通りすぎて案内を再開する
「こっちがサンプルの部屋だよ。ここで作れるものの見本が置いてある」
「そうなんですね」
さなえくんは腕を組ながらうんうん唸って悩んでた。そしてふとあるもののところで止まる
「あ…こういうの…茜似合いそう…」
「革小物?」
ダークブラウンのキーケース。元の形は変えることも変えないことも出来る。皮から切る人もいればなかのパーツだけ変える人もいる。どっちにしても今日で出来る
「これだったら今日で出来るよ。これにする」
「はい」
「帰ったらすぐ渡してあげられるね」
「…すぐ…ですね…」
あれ?様子がおかしい…同棲してるのだから今日持ち帰れば渡せるからそのまま伝えたんだけど…
「どうしたの?何か悩み?」
深入りしてはいけないと警報が鳴り響いてる。でも勝手に出た言葉は取り消せない…
じっと見つめていると…大きな目からポロポロと涙が溢れてきた…
「あ…っとごめん…俺で良ければ話聞くよ」
ダメだってわかっているのに…止まらない…
「もう…渡せないかもしれない…」
「うん」
話によると最近は交際相手である茜くんがさなえくんの話をどこか上の空で聞くことが増えたらしい。
始めは勉強で疲れてるのかなってあまり気にはしていなかったそうだけど、性欲の塊みたいだった茜くんが全く手を出してこなくなってもう随分とたってしまった…
本当は一緒にいるのもう嫌なんじゃないのかな…
そういうことをよく考えるようになったそうだ
一緒に食事をとっていても一緒にバイトに入っていても同じベッドで寝ていても一緒にお風呂に入っても目も合わせてくれない…
だからさなえくんは…別れる準備をしないとならないかもしれない…茜くんを解放してあげないとならないかもしれない…
胸が痛むけれどそれも仕方のないことなのだろうとそう考えるみたいだ
そして今日は突然外泊をすると言い出したようで…これまでさなえくんを置いての外泊などはしたことがなかったそうだ
一人なのか?それとも一緒に外泊する相手がいるのだろうか?いるとして相手とはどんな関係なのか?聞きたいことは沢山あるけれど聞けないで今日は送り出してきたようだ…
それでさっきの表情だったんだ…
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