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第105話

泣きつかれているだろう。さなえくんに食事と風呂を準備する。多分食欲はないはずだからあまり重たくないもの… あまり食材はなかったけれどとりあえず有り合わせで用意した。食べられるといいけど… 「どうぞ。あったもので簡単に作ったからお口に合えばいいけど」 「あの…」 やはり食欲はないのだろう。でも食べないともっと弱っちゃうから…スプーンでスープをすくい口許に持っていく 「ほら。あーん」 言われて思わず口を開けたからいつもこうやって食べさせてもらっていたのだろう 「おいしい」 「よかった。食べられるだけでいいから食べて」 一口口にしたらほわほわした可愛らしい笑顔を、見せてくれた。胸が高鳴る… この笑顔は凶器だね…本当に…良かった…見つけられて… 結局全て食べてくれてホッとした 「ごちそうさまでした」 「お粗末様。よかった。食べられて」 「璃人さんは何でも出来ちゃうんですね」 「そんなことないよ。好きなことしか出来ないんだよね…よかった。少し顔色ましになったね」 「ありがとうございます…あの…」 「ん?」 「俺が家出した理由聞かないんですか?」 聞きたくない訳じゃない。でも無理に苦しいことを話さなくてもいい。さなえくんが楽になれる方を選んで欲しい… 「話したければ話してくれていいしそうでないなら聞かないよ。俺はさなえくんがいい方がいい」 「あの…」 少し戸惑いがちにさなえくんはゆっくり口を開く… 「茜が…知らない人とホテル街へ消えていったのを見ちゃって…やっぱり俺の予想は的中してしまった…」 話ながらまた涙を溢してる…そっとその涙をぬぐう。泣き顔まで綺麗な子。こんなに一途に思ってるのに…茜くん…何してるの? やっと涙の止まったさなえくんが申し訳なさそうに俯く 「すいません…。今日会ったばかりに人に…」 「大丈夫だよ。俺聞くの好きだし。頼られるの好きだし」 「ありがとうございます」 「で?このまま顔も見ないで別れていいの?」 こんなにさなえくんに思われて浮気なんて…きっと何かある…本当に浮気なら…俺も色々考える 「はい…でないと苦しくて」 「ん~…そう。でもさ後悔するかもしれないよ?それが本当でも直接別れを告げられなければ次にも進めないし。だから顔見て話しな。その準備が出来るまでここにいてくれていいし。俺どうせ独り身だし恋人もいないしね」 「そうですよね…本当に甘えてもいいですか?…」 「いいよ。なんなら夜のお相手もしようか?溜まるものは溜まるでしょ?そんだけ長いこと自慰すらしてないなら。なぁんてね」 「あははっ…」 下品な提案にさなえくんの瞳が揺れる。…大丈夫…抱かないよ。君が縋ってきてもね。この状態なら彼は自棄になって誰かに抱かれていたかもしれない…そんなことしたら絶対後悔する… よかった…本当に…見つけたのが俺で…

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