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第2話

普通は虜になるような笑顔を浮かべとるキオに腹が立ち、重ねられた手を引っ張って無理矢理立たせた。 イヤとか馬鹿にしてるとかやなくて、そんな顔しとるキオを変えたりたいって思うて。 そんな顔をさせた俺自身に腹立ててるのもあるんやけど。 目を見開いているキオを壁に押しつけて、首筋に思い切り噛みつく。 自分が立てとる水音の間に悩ましげな吐息が聞こえてきて、不思議な気持ちになる。 苦しないか? 気持ちええんか? グッと力を込めれば、ハァと声を上げた。 気持ちええんや……良かった。 俺もええわ。 味見程度に済まさんとと思て、唇で優しく挟んで離し、血を止めた。 肩越しに重みと息を感じ、トントンと叩いてキオを起こす。 んぅと声を上げて起きたものの、ふわふわしているようやった。 「こんなに気持ちええんやねぇ」 そう言ってヘラッと笑ったキオを見て、胸が高鳴った。 なんやろ、この感じ……。 「なおしてきましたか?」 「はい、もうまっさらにしてきました」 そう言うキオの笑顔は本物で、嬉しいようで少し悲しくなる。 「私のことは(にい)ちゃんと呼んでください、タメ口で結構です……私もタメ口で話しますから」 「じゃあ、兄ちゃん。1つお願いしてもええ?」 落ち着かない様子でそう言うキオに、俺はどうぞと言うた。 「必ずとは言わんけど……話す時はなるべくキオって呼んでな」 恥ずかしそうに言うキオがかわいく見えて、俺はわかったと言うた。 「じゃあ行こうか、キオ」 俺がそう言うと、キオは明るい声でうんっ、と声を上げて頷いた。

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