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第3話

待ち合わせ場所から出た俺たちは次の目的地へ向かう。 キオの要望で手を繋ぎながら大きい提灯がある観光名所を通り過ぎる。 「今から和菓子とご飯を一緒に食べれるところでメシ食うから」 俺が優しくそう言うと、ぶんぶん手を振るキオは目を輝かせた。 「和菓子もご飯も食べれるん? うわぁ、幸せ〜」 何食べようかなと言いながら頭を巡らせ、んふっと笑っとった。 会って数時間も経ってへんのに、この馴染み感なんやろな……警戒色ゼロやし。 「今日、なんで俺といるかわかってる?」 あえて雰囲気をぶち壊しかねないことを踏切って聞いてみる。 「僕の血全部を兄ちゃんに捧げる代わりに僕に最高の1日を与えてくれるんでしょ?」 「だから僕は最後の晩餐を食べて、兄ちゃんは僕を食べる……わかってるよ」 キオはそう言うて悟ったように微笑んだ。 「恐ないんか?」 何人も相手してきたけど、20代くらいでこんな死に方を選んで冷静でいられるのが信じられんかった。 「全然恐ないよ」 「なんで……?」 こんな問い詰めることにびっくりしたのか、俺の顔を見てキョトンとする。 吸血鬼になってから自分の顔見てへんからわからんけど、めっちゃ不安な顔しとるんやろな。 キオは考えるように目を上向きにした後、ふふっと穏やかに微笑んだ。 「相手が兄ちゃんやから……かな」 「俺……やから?」 戸惑う俺にそう、と静かに発した。 「僕の最後にそばにいるのが兄ちゃんやから」 そう言うてキオは手を恋人繋ぎに絡め直した。 「僕ね、さっき兄ちゃんに噛み付かれた 時……天国やった。このまま吸い尽くされてもええなぁってくらい気持ち良かったんよ」 「今もこうやって手を繋いでくれて、拙い僕の言葉をちゃんと聞いてくれるから……キオはこの世に存在していたんだって実感できてるから」 ありがとう、兄ちゃんと言うて強く握る手に俺は包み込むように一瞬ギュッと力を入れた。 俺の食事は血液、他の食べ物は味がしないようなもんやから意味ないかもしれん。 でも、今日……キオとのメシ会だけは楽しもうかなとなんとなく思うた。

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