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第19話

「長い間待たせてもうてごめんなぁ、もう大丈夫やからね」 足早に戻ってきたキオはそう言うて、また寝転んだ。 クリーム色の肌に白いガウンを纏っとる姿に血の気が高まる。 ギシッとベッドを揺らして、俺はキオの上に乗っかる。 「最期に2つほど聞いてもええ?」 俺はなるべく優しく、キオの顔を見ながらそう囁いた。 キオは俺を見つめながら、ええよと答える。 「全血液やと、身請けってもんが最近出来たんやけど……どうする?」 無理を承知で提案してみる。 ええって言えるほど、俺は安ないから選択肢は1つだけ。 嘘でもええ言うたら、すぐ噛みついたるわ。 「燃やしてくれてもええし、食べ尽くしてくれてもええよ……全部兄ちゃんにあげるから」 キオはそう言うて、目を細めながらニッと笑った。 何言うてんの? 全然意味ちゃうし、俺にあげるから何してもええなんて ……何言うてんの。 「じゃあ……最後に俺に絶対して欲しいこと言うて?」 大概はやっぱり死ぬのはイヤって言うか、苦しむ前に死なせてって言うか。 キオになら……キスしてとか抱きしめてぐらい言われたらしたるかな。 「僕が息絶えるまででええから、僕のことを想って飲んで……僕だけのことを考えて」 そう言うて、キオは満面の笑みを浮かべ、目を閉じた。 ……たまらんわ。 俺の頭ん中のほとんどはキオやっちゅうねん。 ほんまもう、なんやねん。 心残り、1ミリもないんか。 ……いや、まだ実感が湧かんだけや。 ちょっとカマかけたろ。 俺はキオの頭をポンポンと撫で、右手を顔の方へ流してヒゲ1つない口元を撫でて、綺麗な顎をクッと上げた。

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