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第3話
「なあー、そろそろ新しく一年、揃える時期じゃん?」
「まあな。何、やんの?」
「ん〜…よし。重い腰、あげっか!」
一年の入学が無事終えた一週間程後から校舎内に奇妙な張り紙が度々目撃される様になった。
" 求む!新馬鹿校トップ!我こそはという腕自慢は〇月〇日三階、3年Z組教室まで!"
という内容の如何にもな物。因みに添え付けられているイラストは驚く程に下手。
「…アホくさ。」
「何で?楽しそうじゃない。」
「急に背後に立たないでくんね?」
後ろから覗き込む形で張り紙を見ているのは一週間ぶりの亜澄だった。今まで何処に居たのかやら神出鬼没なコイツに対する質問は湯水の如く湧き出てくるが一先ず呑み込み。興味津々にあからさまな画用紙に目を通す亜澄に同情した。
「まさか、出る気?」
「さてね、どーだろ。」
沸々と湧き上がる嫌な予感を胸に空き教室へ消える亜澄の姿を見送った。
件の日、当日。
その日、朝から亜澄は居なかった。あの張り紙の時間は昼過ぎ。最後の終礼が鳴ると同時に開始されるらしい。終礼の時点でこれに挑む人物の姿は教室に無く、それで参加者と非参加者が一目瞭然なのだとか。
無論、亜澄の姿も又教室に無かった。
嫌な予感が再び胸の奥で燻り出す。飛び出る様に教室から出て階段を駆け上がる。上へ、上へ。普段一年が三年の独占する三階へ上がる事はほとんど無く、それこそ今回の様に三年が許した時くらいしか進んで上がったりしない。
3年Z組、そう書かれたプレートを前に、戸を開く。途端、
「おっせーなあ、参加すんなら五分前行動だろ一年生ー!」
鼓膜を劈く声。態々こんな狭い教室で拡声器を使う馬鹿な男。半ば睨む様に顔を上げれば、明るい髪に真っ赤なアロハシャツを身に纏った目立つ男は教壇に立って居た。
「お前やっぱソレうるせえわ。」
そう言ったのは額にバンドを付けたキャラもんマスクの目付きの悪い男。
「なんなんスか。」
取り敢えずと外の三年に列に押し込まれその腕を払い飛ばしじい、と教壇に立つ野郎に一瞥くれてやる。
「…おっつー、俺ってば貫禄的なアレ、足りねえかな。」
「知らねえよ。」
何やらこそこそと会話をする三年を訝しげに見ていればアロハシャツが咳払いをし、再び此方に身体を向ける。教壇から降り、先頭の男の直ぐ眼前まで距離を詰めた。
不敵に笑む様はトップに君臨していた男其の物だと今でも思う。憧れとは、こうして出来ていくのだろう。
「俺の名前は、南元春!今のお前らの頭で、お前らが奪るべき首だ!お前も、そこのお前も、遅れて入って来たお前も、お前らよろしくな!」
頭が殴られた様な、衝撃だった。
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