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第9話
かけますよ、そう言うと温水プール位の温度でお湯が身体にかかる。少し残った顔の白濁液や腹にぶちまけられた白濁液をお湯が流していく。中に出さないだけあって、こういう時の処理は楽だ。しかし引っかかるのは、今まで一度も中出しをされたことがないという事だ。これまで、もう十回以上は体を重ねている。下手すりゃ二十回いっているかもしれない。
「遼河、は、中出ししてくれないんだな」
ぽつりと独り言のように呟いた。その言葉に、シャワーを流していた遼河の手が止まる。そしてその後、いつもの顔で笑った。
「前も言ったでしょう?たかがセフレに中出しを望まないでください。本当に好きな相手が出来たら、初めての中出しをプレゼントしてあげてくださいよ」
その一言でまた胸が痛む。本当に好きな相手、そんな言葉をこいつの口から聞きたくなかった。それよりもきつい言葉。たかがセフレ。こいつにとってこの関係はたかがセフレなんだ。俺もそう割り切ってここまでやってきたはずだろう?何を今更悲しんでいるんだ。
「そう、か」
ぎこちなく笑った表情を作ると、気持ちをリセットするためにかかるお湯を手で掬い顔にかけた。今にも涙が零れ落ちそうなこの顔を見られないために。
「今日は、もう帰ってくれないか?」
初めて自分から帰れと伝えた。普段はもっといて欲しいと願うくらいなのに、今日は少しでも早く別れたかった。
俺の言葉を聞いた遼河は一瞬驚いたような顔をした後、少し顔を伏せ「分かりました」と呟いた。玄関先に投げ出してあった鞄を手に取ると靴を履き、玄関の扉を開ける。
「おやすみなさい」
そう微笑んで出ていく背中を、見届けることしか出来なかった。
「遼河…」
欲望の液が撒き散らされたベッドに腰掛けた。自然と腕が動き、着たばかりのシャツもズボンも脱いでいく。下着を脱ぎ全裸になった俺は、背中にどろりとしたものを感じながらベッドに転がる。その液を指に絡めると解れきっている孔に宛てがい、指を二本中へ進める。
「ふっ、あんっ、」
甘い嬌声が一人、部屋の中に響く。頭の中には愛おしい相手の姿ばかりが浮かんでくる。あいつの指使い、言葉、表情。それを思い出すだけで今すぐにでも達してしまいそうだ。遼河の指使いを真似するように、中で指を折り曲げたりバラバラに動かしたりして前立腺を刺激する。
「ひゃんっ、あッ、ふぁっ、あんッ」
やはり先程までの感覚が残っているからか、快感が絶頂に到達するのが早い。
「あっ、はる、かっ、はるかっ、好き、すきっ、い、くっ!」
大好きな人の名前を何度も呼びながら達してしまった。認めたくなかったのに。言いたくてたまらなくなった。
「遼河、好きだ…」
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