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第14話
プルルルプルルル
社長のいない社内に電話の音が響く。
いつもの様に近くの女性社員が受話器を取り電話に出たが、その顔を一瞬にして青ざめた。
「えっ、はい。はい、分かりました。すぐに」
女性社員は受話器を置くと、青ざめた顔で全員を見渡した。
「社長が、倒れたって…!」
その一言で社内が一気に騒ぎ出す。立ち上がったり近辺で話し始めたり、全員の顔から不安が読み取れる。
「かなっ…、社長は今どこに?」
遼河が立ち上がり女性社員の方まで駆け寄る。その顔はいつものへらへらした顔からは想像出来ないほどに、緊迫感のある顔だった。
「神崎社長の会社で様子を見ているみたいです。誰か迎えが欲しいって」
その言葉を聞くと遼河はすぐにでも行こうと、自分のデスクに戻り用意を始めようとした。細かい情報はいらない。朝から様子がおかしい社長を一人にさせた、自分に責任があると思い込んでいるようだ。
しかし。
「俺が行く。大河内は待ってろ」
突然声がしたかと思えば、いつの間にか入り口付近に北園が立っていた。ほかの社員が騒いでいる間に準備をしていたようで、もう既に行ける状態だ。
遼河は入り口に向かって歩いていくと、北園を無視して横を通り抜けようとした。しかし、それも阻まれてしまう。
「おい、どけよ。早く行かねぇと」
「お前は朝から社長と険悪だろ。大体、社長がこうなったのもお前のせいじゃないのか。自らついて行くのを断ったのはお前だろ」
「それは…」
「俺が行く。こっちだってお前以上に心配してるんだ。早く行かせろ」
二人のやり取りがどんどん険悪になっていく中、ほかの社員はそれを止める術を持っていない。ただ大事にならないように見守るしかなかった。
「決定だな。行ってくる」
そうとだけ言うと、北園はドアを開け出ていった。その姿には若干の焦りも見えるようで、社員達は驚いたようにして呟いた。
「北園さんが焦ってる?」
「こんなこと、自ら申し出るようなタイプじゃないのに」
「社長に気に入られてるからね。大切なんじゃない?」
遼河は追うこともできずその場に立ちつくした。そして、自分の未熟さに悔しそうに唇をかみ締めた。
ピッピッピッピッ
プルルル
「もしもし。以前お会いしていただいた斎藤の部下の北園です。今そちらに社長が居るようですが、容態はどうですか?」
社長を通して共通の知り合いである、会議に出席していた社員に電話をかける。彼から今の状況を聞き、コンビニでスポーツドリンクやゼリー、軽食などを買い会社に向かう。
受付嬢に要件を伝えると、三階の来賓室に通された。そこのソファーで寝かされているらしく、そこに行けば会えるらしい。
コンコン
部屋のドアをノックするが返事はない。静かにドアを開け中に入ると、そこから見える向かいのソファーに、社長が寝ていた。
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