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第18話
そして、瞬く間に土曜が来てしまった。この日が来るまで、何にも集中出来ず、仕事中には部下に何度も仕事を変わってもらっていたくらいだ。その度に北園がこちらを見て笑っているような気がして、またストレスで倒れそうだった。
遼河とは…、あの日。倒れた日のままだ。前ほど親しく話さない。昼休憩も一度も現れなくなった。当たり前が無くなるとは、こういうことなのか。今までの当たり前がおかしかった。初めてそう感じた。これくらいが普通の社員と社長の関係だ。元々親しすぎたのがおかしかったし、他の社員から見たら不快だったかもしれない。俺一人で勝手に好きになって舞い上がっていただけだ。
考えれば考えるほど、ネガティブ思考が広がる。やめよう、こんなこと考えるの。今からは北園に集中しないと。
そんなことを考えているといつの間にか駅の前にいた。駅前というだけあって、やはり人通りも多い。あいつ、なんでわざわざこんな場所を指定するんだ。スーツの裾をまくり時計を確認すると、指定時間の十分前だった。この時間で見つかるだろうか。ひとまず、あいつは身長高い方だから、分かりやすいと言えばわかりやすい。
あ、あれか?それらしき後ろ姿を見つけて声をかけようとする。
「きたぞ…」
「こっちです」
前にいたはずの北園の声が、真後ろから聞こえた。それと同時に腕をひかれ、よろけた身体は声のした方へと倒れる。顔を上げればそこには北園がいた。
「部下の後ろ姿くらいちゃんと覚えておいてくださいよ」
「あ、ああ、すまん」
しっかり謝りたいのに関わらず、北園に触れた途端これからの恐怖がいきなり出てきた。先程までは普通にいられたのに、それを改めて感じてしまうといきなり来る。なんとも女々しいようで悔しくなる。足までも震えてきたじゃないか。絶対気づかれている。
「…緊張してるんですか?」
やはり何かを悟った北園は頭上でクスリと小さく頬笑みを浮かべた。それでさらに羞恥心が湧いてくる。男に抱かれるなんて初めてでは無い。しかし、俺の中は遼河しか受けつけていない。他の男と身体を混じえた時、俺はどうなってしまうんだろう。そう思うと怖くて仕方ないんだ。
「別に抵抗しなけりゃ痛いようにしませんよ。そんなに強引にできるほど俺も慣れてませんし」
さらりと言われた北園の言葉に一瞬ほっとしてしまった。唐突にこんなことを言い出すようなやつだから、経験豊富なものかと。
「じゃ、行きますか。そこの路地でたらホテル街なので」
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