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第20話

要斗さんは自分の部下である男の腕を引いてホテルに入っていく。 こんなことをする人ではないと、分かっている。だから変な疑いはしない。けれど、なんであんなに突き放すようなことを。俺、何か悪いことしたか?ここ最近ずっと社内でも険悪なままだし。何だ、すごい胸が苦しい。 「遼河?なんか空気悪かったけど…」 「あ、ごめん」 隣にいた友人に声をかけられると我に返った。今日はゲイ初心者の友人のために、そこにある玩具屋についてきただけだ。それなのにこんな所で会うなんて。しかも勘違いされるなんて。しかも弁解の余地すらも与えてもらえなかった。もう突き放されてしまったのだろうか。 俺よりも優秀なやつと手を組んで、身体まで組んで。俺にもう入り込む隙間はないのかよ。 考えれば考えるほど苦しくなってくる。何だか締め付けられているような、息苦しいような。今までは毎日が幸せだったのに、なんで急に。 「遼河、あの人?前言ってたセフレの人って」 突然、さっきから黙っていた友人が声をかけた。その通りの問いかけに一度言葉に詰まるも静かに頷いた。この友人には前々から、要斗さんとセフレになってすぐの頃から色々な話をしていた。俺らの関係を一番理解してくれている第三者だ。 「…ずっと聞きたかったんだけどさぁ」 随分と改まったようにこちらを見てくる友人の視線に、何故か畏まってしまう。 「遼河って、あの人のこと好きでしょ」 「…ん?ん?」 突然何を言い出した。理解のできない言葉に、疑問しか浮かばない。俺が要斗さんのこと好き?いや、要斗さんはセフレだし。 「何言って…」 「お前、あの人の話する時いつもすげぇ楽しそうだしよ。俺、お前の話してる姿見て男同士もいいな、って思えたんだよ。どう見てもあの人のこと好きだろ」 言葉を聞く度に動揺が凄い気がする。今まではそんなこと意識したことなんてなかった。ただ、一緒にいると楽しいし、そういうことしてても要斗さん可愛いし、って。それくらい。でも、この感情、考えてみれば他の奴にはない気もする。 要斗さんから誘われた時は凄い嬉しいし、逆に仕事とかで潰れたら凄いショック。そう言えばこの前帰ってくれ、って言われた。あの日は本当に悲しくて、こいつに相談したっけ。 つか、さっき俺すごい慌ててなかった?この姿見られて、すごい慌てて弁解してた。 考えれば考えるほど胸の奥がじりじりと焦げたように熱くなり、あの人を思うだけで胸が締め付けられる。 俺、要斗さんが好きなんだ。

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