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第21話

ついそばのホテルに入ってきてしまった。 北園になんの承諾も得ずにあんなことをベラベラと喋ってしまった。 最低だ。遼河にも、北園にも失礼なことをした。 つい流れで通されてしまった部屋。そこの二人がけソファーに、俺と北園は座っていた。ダラダラと冷や汗をかき、思考回路もままならないまま。北園には申し訳ない気持ちでいっぱいだが、今は遼河と隣にいた男のことが気になって仕方がない。直ぐに乗り換えられるほど、俺への執着は少なかったのか、と今にも泣きそうになる気持ちを抑え、北園の方を向いた。 「悪かった。勝手にこんなことをして」 俺の言葉が届いているのか、北園は壁を見つめたまま微動だにしない。何を思っているのか分からないが、その瞳は揺らいでいるように見えた。そして、ふと口が開く。 「社長、は。あいつのこと…」 戸惑いながらも小さな声で言葉を紡いでいる北園。 「大河内のことが、好きなんですか」 告げられた言葉に、大袈裟なまでに心臓が飛び跳ねるようだった。 そんなにわかりやすい態度をとってしまっていただろうか。いや、確かに分かりやすかったかもしれない。こんなに明らかに動揺して、気づいてくれと言っているようなものだ。 ふぅ、と小さく息を吐いて心を落ち着かせる。 「そうだ。俺は、大河内…、遼河が好きだ」 言ってしまった。誰にも打ち明けられなかったこの胸の内を。 「…でも、あいつは早速他の奴に乗り換えてるんですよ」 ふと、黙っていた北園が呟いた。その呟きが酷く胸を揺さぶる。 「社長の気持ちも知らずに、散々社長のことを抱いて」 「いなくなったら直ぐに他のやつに乗り換えたんですよ」 やけに強気な口調の北園は、俺の様子に遠慮なしにものを言う。普段ならそんなことを言われればキレるところだが、今は逆に何も言い返せなくて辛い。その通りだからだ。もし違うとしても、遼河のことを俺が知ったかぶりで言えるはずもない。 「そ、うかも、しれないけど。けど…」 捻り出した声の先は続かない。けど、遼河はそんな奴じゃない。そんなこと、言えない。確信なんてないから。 駄目だ、もう堪えきれない。 ずっと歯を食いしばって耐えてきた涙が、一粒、二粒と目から溢れ出てくる。いくら目元を押さえても止まらないそれは、俺が遼河を思う気持ちを物語っているようだった。 みっともなく北園の前で号泣してしまっている。目元を押さえていたスーツの袖はすっかり色を濃くして、大量の涙を吸収しているのがわかる。 「ほら、そうやって泣くんだろ」 小さすぎる北園の呟きがしっかりと耳に届いてきた。どういうことだ、と顔を上げるとその瞬間温かな温もりに包まれる。北園に抱き締められた。 「俺なら、泣かせるようなことしないのに」

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