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第22話

「俺なら、泣かせるようなことしないのに」 北園の行動も、言葉も全く理解ができなかった。ただ、今はその温もりが温かすぎて涙がとめどなく流れるだけだ。ずっとこの温もりを感じてしまいたいと、そんなことを頭が過ってしまうほどに。北園は強く抱き締めてくれた。俺の涙が止まるまで、ずっと背中をさすりながら待ってくれた。 暫くしてようやく涙が止まった。随分と泣き腫らした目は、真っ赤になっていることだろう。その目の端の涙をぬぐいながら北園の胸を軽く押す。 「ごめん、こんなところ見せて」 そういうと北園はゆっくりと首を横に振った。そして、優しい手つきで俺の頭を撫でた。 「社長。今から言うこと、動揺すると思うんですけど嫌がらずに聞いてください」 畏まったようにこちらを見つめ、何かを決心したように告げる北園から目を離せなくなる。俺と絡む視線はあまりにも真っ直ぐで、捉えて離してくれない。 「俺…、社長のことが好きです」 告げられた言葉はあまりにも衝撃的で。でも、ストンと胸に落ちてくるような気がした。何も嫌悪感など抱かないし、寧ろその感情を持ってもらっていたことには嬉しさも感じた。 「ずっと、初めて声掛けてもらった日から好きでした。だから、あとからきた大河内なんかに取られたくない」 俺の目を見つめたまま話す北園の一言一言が、胸を締め付けた。こんな気持ちにも気づかずにずっと遼河に抱かれ続けて。先程北園が言っていた言葉は、俺にぶつけた苛立ちでもあるのだろうか。 「今回この話を持ちかけたのも、どうせ俺の恋は叶わないから。だからせめて、一度だけでも貴方に深くまで触れてみたかった」 戸惑いながらも一言、また一言と噛み締めるように告げる北園の言葉は俺の心を離さない。また込み上げてくる涙を堪えながら話を聞く。 「でも、もう我慢しない。欲張ってみようと思います」 北園は一度俺から離れ、ソファーの下から俺を見上げた。そして、腕を広げこう言ったのだ。 「俺の気持ちに応えてください。俺はあいつ以上に貴方を、要斗さんを愛します。幸せだ、って毎日言わせます。だから、俺を選んでください」 失恋から立ち直るためには新しい恋が必要だ。 そんな言葉をよく耳にする。前までは理解ができなかった。そんな相手が都合よく居る訳でもないし、いたとしてもすぐに他の奴に心変わりなんて出来ないだろうと。 そんなことを言っていた自分が嘘みたいだ。 泣きそうなのを堪えた不細工な顔のまま、北園の腕の中に身体を収めた。 「俺は、北園を選ぶ」

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