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第25話

意外にも四時間を終えるのは早かった。 あれからはずっとプライベートの話ばかりしていた。服はどこのブランドが好きかとか、どういう部屋かとか、好きな食べ物とか。他愛もない話ばかりだけど、普段しない話をしていると自然と話は膨らんだ。 「早かったですね、六時間経つのも」 ホテルから出るとまだ外は薄暗かった。ほぼ深夜だろうか。時計を確認すると午前四時前。普段の出社時間まではあと三時間以上はある。一度寝た方がいいと思ったが、北園を寝させないのも罪悪感が湧く。 「少し眠いな。…お前、俺の家来るか?」 暫く考えた後、北園なら家に招いても手は出さないだろうという信頼の元言葉を告げた。北園は数秒ぽかんとした後に動揺しているのか視線をさまよわせた。 「別に如何わしい意味じゃない。ただ、仕事に支障が出たら困るから寝るだけだ」 変な誤解をされないように一応そう伝える。北園はふるふると震えるとふとこちらを見つめた。 「それ、軽く他の男に言ったらだめですからね」 それだけ言うと北園は俺よりも前を歩いて行った。それは隠しきれない動揺をどうにかして隠そうとしているような仕草で、どこか可愛らしく感じる。 暫く会社に向かって歩いていると、ふと立ち止まった北園が俺の方へと手を差し出してきた。 「まだ人も少ないですし…、繋ぎませんか?」 そう伝える北園の顔がみるみるうちに赤くなっていくのを見て、自分までも顔が赤くなっていく。互いに真っ赤な顔で笑い合うと、俺はその手を取りしっかりと握りしめた。 意外と会社は駅から近い場所にあるため、十数分歩くと辿り着いた。会社に着いても階段を上がっても、北園は手を離さなかった。 ドアを開けて中に入っていけば、北園はそわそわしたまま中に入ってきた。そして玄関先で靴を脱ぎ中に入れば、ぐるりと部屋の中を見渡し子供のように目を輝かせた。 「要斗さんの部屋、こんな早くに来れると思ってなかったです」 楽しげな北園を見るとこちらも自然と笑みが零れる。 「風呂入るか?と言っても、シャワーだけど」 スーツを脱ぎクローゼットに収めながら問いかける。北園は未だにソファーの上でそわそわしており、落ち着きを取り戻さない。初めて一人で祖父の家に泊まりに行った日のことを思い出し、その姿と一致したのが面白くて笑ってしまう。 「あ、要斗さんがいいなら、はい」 「じゃあ、少し待ってて」 頷いた北園を確認すると風呂場に向かう。ひとまず例のマットを退かすことが最優先だ。 風呂場につくと浴室の一面に敷かれたマットを見てため息をつく。ひとまず風呂場の隣にある物置部屋にそれを運び、収めた。

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