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第27話

翌朝。 昨日は色々あったが、久しぶりにぐっすりと寝れた気がする。あれから数時間寝た俺は、スーツに着替えた状態でリビングまで向かった。 「あ、おはようございます。要斗さん」 そこには既に北園が立っていた。しかし服装はまだ昨日渡した部屋着のまま。それもそうか。昨日のスーツは俺の涙でシミと皺が出来てしまっている。さすがに着る気にはならない。 「おはよう。俺のスーツ貸すよ。ついでにクリーニング代も出す」 何も言われずともスーツを探しに自室に戻ろうとする。北園は「いいですよ」と否定もしていたが、それでは罪悪感が残る。これくらいさせて欲しい。 暫くして部屋からリビングに戻ると、そこにはソファーにきちんと座った北園が居た。どこまでも真面目なやつだ、そう思いながら声をかける。 「北園、持ってきた。これ着てくれ」 北園はぱっと顔を上げると俺の手元のスーツを見て頭を下げた。 「ありがとうございます。またクリーニング出して返します」 昨日もっと軽くいけと言うような会話をしたばかりだと言うのに、やはり長年染み付いたものは離れないのか。北園にとってはこれが普通なのだから仕方ないと言えば仕方ない。 あれから帰り際に買った軽食を口にし、朝食を終えた。俺は普段こんなものだが北園は大丈夫かと問いかけた。俺もこんなんです、と笑った北園は気遣わないでくれというかのように会話を打ち切った。いくら言ったとしても意外にも頑固なところがある北園は聞くはずもないため、すんなりと引き下がるようにした。 本来の出社時間三十分前。俺と北園にしては遅い方だ。しかしたまにはこういう日があってもいい。朝にゆったりと過ごすのは珍しいことだ。 「準備出来たか?」 「はい、お待たせしました」 玄関先で靴を履きながら北園が来るのを待つ。数秒して返ってきた返事とともに北園が小走りでこちらへ向かう。その手にはスポーツドリンクが握られている。 「昨日買っておいたんです。最近要斗さん忙しそうだから、少しでも塩分補給した方がと」 気が利く。完結に言ってしまえばその言葉しか出てこない。会社だけでなく、プライベートでまで気を使えるのか。本当に、年下らしくない。 「ありがとう。飲ませてもらう」 微笑を浮かべスポーツドリンクを受け取ると、北園は嬉しそうに笑った。 行こうかとドアに手をかけ開けようとした。それと同時に家のチャイムがなり、ちょうど玄関先で訪問者と鉢合わせる。 …昨日に引き続き今日までか。 「遼河…」 「要斗さん、と…」 なんでこうも急展開に起きる。休息の時間をくれ。

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