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第28話

朝から最悪だ。 一番に頭に浮かんだ言葉がそれだった。落ち着いた日常的なゲームに、急展開に悪質モンスターでも現れたかのような衝撃だ。 久しぶりに落ち着いた時間を過ごせていたと言うのに、何故こうも急にハプニングだらけ起きるんだ、俺の周りは。というか、俺に。 小さくため息をついて遼河の顔を伺う。少しでも冷たくしないと。自分に甘えていたら、また好きになってしまう繰り返しだ。 「何だ、朝から」 「何だ、って。昨日のことで」 「それに関しては何も聞く気は無いし、そもそも俺に弁解する必要なんてないって言っただろう。お前にとって俺はたかがセフレなんだから」 冷たくしようと思うとどんどんときつい言葉が溢れ出てくる。本心じゃない。今にでも真実を聞いて安心したい。でも、甘えてられない。気持ちを押し殺し、冷たく当たる。 「でも俺は、」 「大河内」 また何かを弁解しようとしだした遼河の言葉に割っていくように、北園が俺の前に立つ。 「嫌がっているのが分からないのか?ここまで拒絶するような事言われて、それでも要斗さんに関わろうとするのはお前の自己満足だ」 フォローに入ってくれて助かった。このままだったら自分が何をしでかすか分からなかったから、安心してしまっているのは許して欲しい。 遼河は北園の物言いに何も言えず、黙っているだけだった。それを見るのも辛い。俺まで眉が下がってしまいそうになり、慌てて元の表情に戻す。 「ああ、そうだ。一つ報告しておく」 何かを思い出したかのように言う北園。その言葉に不安しか浮かばないのだが。 「きたぞ…」 「俺と要斗さんは付き合っている」 ああ、言ってしまった。一瞬何も考えられなくなった。でも、隠すよりはいいか。そんな安心感までも生まれてしまった。こうした方が何かとやりやすいし、諦めがつきやすいかもしれない。 しかし未だに状況を理解できていない遼河は、目を点にしたまま俺たちの顔を見た。別に嘘をついている訳でもない。隠すことではないだろう。 「…そういう事だ。だからお前とのセフレ関係も解消させてくれ」 声は震えてなかっただろうか。大丈夫か、自然に言えていたか。不安ばかりが頭の中をよぎっていく。情けないとしか言葉が出てこない。 「要斗さん、行きましょう」 今にも泣きそうな顔の俺を、北園が引き連れて階段を登ってくれた。こんなの、北園も苦しいだろうに。それでも俺の気持ちを優先してくれる。本当に年下に見えない。 握られた手のひらからは熱く鼓動が伝わってきそうだった。

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