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第3話

「じゃあな」 と言って、ひずると離れたコンビニから5分も歩けばなぎとは家に帰り着いた。 帰りついてカバンを置くと、なぎとはまたひずるにラインを打つ。 布団に入ってどちらかが寝落ちるまで、毎日毎日いつまでもずっと、なぎととひずるは繋がっている。 ひずるは小学6年生の時に東京から転校して来た。小6ですでに身長は170をこえていた。 整った容姿に長めでサラサラの髪、手触りの良さそうなブランド物の服、物怖じしないその態度が見るからに都会の子供といった感じで、転入初日からクラス皆の目を釘付けにさせた。 勉強もスポーツも皆より特別秀でたものはなかったのだが、どんぐりの背比べ的な田舎の子供には、ひずるのその大人びた見た目やしぐさはキラキラと、とにかくカッコ良かった。 転入初日から言うまでもなく、ひずるは非常によくモテた。 一方でなぎとは小学6年生にしては小さく、身長は150センチにもまだまだ遠い、といった感じだった。 髪は年がら年中丸坊主で、日焼けした肌とくりくりの瞳で、どんぐりの背比べの代表のような田舎臭い平凡な子供だった。 そんな自分とは正反対のひずるを、なぎとが見とれないで居られるわけがなかった。 それまでクラス一可愛いと、なぎとがドキドキさせられていた女子よりも、ひずるの格好良さは、なぎとの心をそのドキドキ事わしづかみにしたのだった。 中学生になるとひずるには当然彼女が出来た。 なぎとはひずるが彼女とする行為を根掘り葉掘り聞いては、すごいな、さすがだなぁと尊敬すると同時に、チビな自分には一生経験出来ないかもしれないと本気で思うようになる。 そのうち、ひずると一緒に居るとなぎとは、まるでひずるの引き立て役でしかない、と感じるようになった。 なぎとはひずるを妬ましく思うようになる。 ひずるから距離を置こうとするが、しかしそれすらもひずるはお見通しで、距離などひずるが置かせるわけがなかった。 声変わりが終わり、なぎとの薄いすね毛と少ない下の毛が生え揃う頃、なぎとのを剥いてくれたのはひずるで、マスのかきかたを教えてくれたのもひずるで、エロ本の買い方も、エロビデオを初めて見せてくれたのも、なぎとより何十歩何百歩も先を行くひずるだった。 キスの仕方もセックスの手順も、レクチャーしてくれたのは全部ひずるだった。 「好きだぞ」と先に言ったのもひずるのほうだ。 ひずるからの告白はなぎとにとって、男同士だとか友達なのにとか以上に、泣くほど「嬉しい」出来事だった。 同時にこの感情はなぎとの全てを満たす物だということも知ったのだった。 それからずっと一緒に居る。 高3の今はクラスこそ違うけど、今日も明日も明後日も。朝から晩まで、一緒に過ごせる時間は出来る限りずっと二人で過ごす。 誰にも知られることの無いこの秘め事の中で、誰よりもどんな恋人同士よりも、二人はいつもおなかいっぱい満たされている。

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