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第5話

なぎととのライン電話を終了させてからほんの30分程度の間にひずるは課題を済ませ、いつも使っている通学カバンの中にそれら全部を仕舞い、明日の準備は万全だと最終確認も終えた。 なぎとからお怒りのラインが来ている予定でスマホを開いたが何もなく、「寝たのか?」と思いながら、おーいというラインスタンプを送ってみるが既読はつかない。 「ったく、すぐ寝る…」と、ひずるはぶつくさ言い、ライン電話に切り替え通話開始の文字を押した。 まだ夢の中のなぎとは、さっき放ったスマホをポスポスと手だけで探し当てひずるからの電話を取った。 「なぎと」と、ひずるが名前を呼ぶと、なぎとはまだ目をつむったままで「…課題終わった?」と返すので、ひずるはああと答えたが、その後の言葉が返ってこない。 また寝たなと察したひずるは、机の上のデジタル時計に目をやった。 時刻はPM10:06。 「なぎと、今から出れるか?」 というひずるの問いかけに、パチと目を開けたなぎとは「コンビニ?」と、素早く体を起こし聞き返した。 「いや、東町公園」 「うん、行く」 なぎとが行くと言った時には、既に二人ともスマホを片手にそれぞれのドアノブを掴んでいた。東町公園はなぎとの家からは走れば3分、ひずるの家からは自転車でも10分以上かかるかなあ、という場所にあった。 先に公園に着いたなぎとは、ひずるが自転車で来ることを予測し駐輪場まで行くと、月明かりと裸電球に傘を被せただけの小さな明かりの下でスマホを弄り待った。 数分後ひずるは到着し自転車を停めた。 なぎとの顔を見て目尻が下がるひずるに、なぎとも嬉しそうに駆け寄ると手を繋いで、公園の遊具でハナが滑り台になったゾウのハラの中へと入って行った。 コンクリートで出来たその大きなゾウのハラの中には、どこかのカップルがこそこそするために持って来たに違いない風呂用の椅子が二つあり、二人はそれにそれぞれ腰を下ろした。 「やる?」 と、ひずるがド直球をなぎとに投げると、返事はせずにまた立ち上がったなぎとは、ひずるの前にススッと移動し膝の上に跨がって座った。 照れたなぎとを見上げてひずるは目を合わせると、囲うようになぎとの腰に両腕を回して抱き寄せた。眉はハの字に下がり火照りはじめた体を預けるように、なぎともひずるを抱きしめた。 「…スマホぐらい持って行ってもいいじゃんなあ…」 なぎとは抱きついた腕にぎゅうっと力を込めて、沈んだ声でそう呟いた。

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