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第6話
ゾウのハラの中に柔く射し込む月明かりは、
「仕方ねえよ、勉強合宿だし」となぎとの耳許に言うイケメン花村ひずるの顔を、今朝よりももっとイケメンになぎとに見させた。
「一週間も……オレめちゃくちゃ暇じゃん」
淋しいとは言わず抱きつき、はあ…と息を漏らすなぎとの背中を、ひずるは慰めるようにポンポンとしてやるが、ひずるもまたふう…とため息が漏れた。
そのまましばらくしがみついて動こうとしないなぎとのシャツの中に、ひずるは背中から指を這わせ、「ここでやるの久しぶりだな」と囁き煽った。
「あ……」
なぎとのシャツを脇下までたくしあげると、月明かりが後ろからなぎとの体を照らし、貧相な腹筋がひずるの前に露になった。
そしてその胸の真ん中でひずるは顔を埋めてゴクリと喉を鳴らし深く深呼吸をした。
「ん…ひずるぅ…」
切ない甘えたなぎとの声は、なぎとの胸にキスし始めたひずるの理性を煽ったが、両手で頬を捕らえられ、胸から離されたひずるはなぎとに向かされると、真上から見つめるなぎとの目が閉じられ、そ…っとひずるの唇を塞いだ。
ひずるが口を開くとなぎとは舌をその中へ挿し込んだが、すぐに逆転され遠慮気味ななぎとの舌をひずるは強く吸い上げた。
「ふ…ン……」
なぎとの鼻から甘い吐息が漏れる。チュ…ヂュ…っとお互いの涎をすくう音と吐息だけがやたら大きく耳に響いた。
やっと息継ぎで唇が離れると、「ん…っ!オレ…っ」と、なぎとはまた塞がれる前に言葉を発した。ひずるは構わずなぎとの後頭部を引寄せるが、なぎとはその腕を掴みぐっとストップさせて、もう一度最初からちゃんと喋りはじめた。
「あ…オレね、明日から一週間親戚の叔父さんちにアルバイトに行くよ」
なぎとを見つめうん?と聞きながら、ひずるはなぎとの唇を濡らす涎を指で拭ってやる。
「明後日の盆踊りにも一緒に行けないし、お盆は絶対会えないだろう?…もう週末しかない」
「うん」
「でもお盆前の週末は準備とかで家の中バタバタしてるから、会えてもそれ以上は無理だと思う…」
「…かもな」
「だからオレバイト行って、バイト代もらったら……その、……ラ、ラブホに……」
勢いよく喋り出したなぎとだったが、最後は尻すぼみになり赤くなった顔を下げた。
「はっ…!…なにそれ、マジで?」
なぎとの突然の提案に、ひずるは驚き目をキラキラさせた。
こくりと頷き更に熱くなって縮こまるなぎとの顔をひずるは嬉しくて覗こうとするが、なぎとは隠れるようにまたひずるにしがみつき顔を伏せた。
なぎとの顔がどうしても見たいひずるは、なぎとの肩を掴むと「こっち向いて?」と小さくなぎとの耳にお願いする。
なぎとはひずるのお願いにほんの少し体を離して、真っ赤な顔をひずるに見せた。
「……あっ…つい」
そう言ってなぎとはやっぱり下を向いて、はぐらかすように手のひらでパタパタと自分の顔を扇いだ。ひずるも扇いでやりながら、かわいいヤツだともう一度なぎとにキスをした。
真夏だというのに夜は案外涼しげで、ここに着いた時の汗はすぐに乾いたというのに。
その仕草も言葉も笑顔もなぎとの何もかもが嬉しくて、ひずるも十分のぼせそうに熱かった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ゾウのハラの中を出て、手をつないで駐輪場まで戻って来た二人はスマホで時間を確認した。
時刻はPM11:11
未成年の夜間の門限はとっくに過ぎている。
「あ…明日は何時集合?」
「7時集合だけど10分前に来いってさ」
「ひー!はっや…!」
「だろう?気合い入れすぎで萎えるっつの」
「あははは!……」
跨がるばっかりにまで自転車のハンドルを握っているひずるに、なぎとは名残惜しそうに会話を取り繕っていたが、もう本当に帰らないとマズイのはわかっていた。
「じゃあ!明日から合宿頑張ってな!」
なぎとは笑顔でひずるを見送り、ひずるも笑顔で「おう!」と答えた。
駐輪場を出て二人は、「じゃあな」と手を振りあって別々の道を帰って行った。
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