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第7話

なぎとは自宅のお座敷で、クーラーをギンギンに効かせ大の字に寝ころがり、座布団を枕にうとうととした。スマホは手から離れている。 さかのぼること6日前の深夜。 東町公園でひずると別れて帰宅した後も、なぎとはひずるが寝落ちるまでラインのやり取りをした。 翌日から学校がフリー登校だからか、ひずるが寝落ちてもなぎとはスマホゲームをあれやらこれやら往復し、結局寝落ちたのは、もう夜が明ける頃だった。 月明かりの中、ひずるの膝の上でなぎとが思い付いた計画はこうだった。 6日の早朝、叔父さんが仕事に出る前に電話をかけて、「泊まり込みで5日間アルバイトに行っても良いか?」を聞く。すると叔父さんは待ってましたのごとくふたつ返事でOKを出し、なぎとは就業時間の9時に間に合うように叔父さんの家に行く。 6日から10日までの5日間、なぎとはアルバイトに励み、帰りにアルバイト代をもらって帰る。その夕方、ひずるに報告を上げる。ひずるは大喜び&すごく褒めてくれる。 そしてこのバイト代で、翌日からの週末をひずるとラブホで一泊する。 なぎとがこの突発的計画を実行できる、と確信していたのには理由があった。 叔父さんはいつも「人手が足りない」と言っていたし、なぎとに対して「就職が決まらない時はうちに来い」と、顔を見るたび言っていたからだ。叔父さんも叔母さんも喜ぶだろうとさえなぎとは考えていた。 しかし夜更かしが祟ったなぎとが目を覚ましたのは、もう就業時間の9時をとっくに過ぎた頃だった。スマホの時計を見てヤバいと飛び起き、起きるなり急いで叔父さんに電話をかけた。 「暇だからアルバイトに行こうか?」と。 なぎとの突然の申し出には確かに喜んでくれたのだが、「今は新しい人が来てくれたから大丈夫よ」と、「ありがとねえ、なぎちゃん。」と、もう仕事に出掛けた叔父さんに代わり、叔母さんから優しく丁重に予想外のお断りをされたのだった。 血の気が引きマズイ…!!!と、なぎとは固まる暇も無く早々と叔父さんちのアルバイトは諦め、スマホで激短のアルバイトを探した。 しかし、こそこそと怪しいなぎとの素行をママに気付かれ、なぎとはママにたいそう怒られた。 進学希望ではないとは言え、高校3年生のなぎとがここにきて無許可でアルバイトなど出来るはずが無いのだ。学校に見つかりでもしたら謹慎処分になり、たいした成績でも無い+内申書に大きなダメージを負う事は間違いなかった。 ママが怒るのも当然だとなぎとも思った…。 「アルバイトに行く暇があるなら学校に行きなさい!!」 なぎとはママの言う通り、しぶしぶフリー登校日に毎日登校をしたのだった。 家の手伝いやおばあちゃんのお使いをして、おばあちゃんから少しだけお駄賃をもらうことはできたが、ラブホに一泊するにはほど遠かった。 今日、ひずるは勉強合宿から帰って来る。 なぎとの計画では、なぎとは昼までバイトで夕方ひずるの家に行くつもりだった。 しかしひずると合わせる顔が無いなぎとは、大事なスマホも手離し奥座敷に逃げているところだ…。

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