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目的地である神社に到着すると、自転車をとめて境内へと歩いていく。
「夜の神社って怖すぎ」
「俺も同じこと思ってた」
「拓也も怖いとか感じるんだ!?」
「は?普通に感じるし!……よし、怖いなら手を繋いでやろうっ」
「は!?おい、やめろって、わわっ!」
「ほらほら、足元危ないから」
彩斗の華奢な手が、拓也の大きな手にすっぽりと包まれる。
……こっちの気も知らないで
彩斗は頬が熱くなるのを感じていた。
境内を通りすぎ雑木林の中へと入っていくと、大きなクヌギの木が現れた。
樹液が染み出している所には、様々な虫が集まっている。
「すっげえ!今年も大漁だな!彩斗、上見ろよ、でかいカブトムシ!」
普段から明るい拓也だが、ここまではしゃいでいる姿を学校では晒さない。
「本当だ!でもあんな高い所届かないんじゃ……」
そんな彩斗の言葉をよそに、拓也はひょいと飛び上がりカブトムシを捕らえた。
バスケでシュートを決める時のような、しなやかな動きが見事だった。
彩斗は思わず
キレイ……と呟く。
「ほら、手ぇ出して」
拓也がカブトムシを差し出す
「おぉ!ありがと……ぎゃっ!」
差し出された手を無視して、拓也は彩斗の頭にカブトムシを乗せる。
「あははは、めっちゃお洒落」
「クソ……にしても大きなカブトムシだな、すごい、キレイだ」
カブトムシを頭から手に移し、うっとりと眺める彩斗を、拓也は優しい顔で見ていた。
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