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※若干無理やりな表現が入ります。 不意に、ベロリと耳を舐められる。 「ひっ……」 気持ち悪さから声が出てしまった。 後にいるであろう痴漢野郎の手が止まり、息を飲む声が聞こえた。 終わったのかと思いホッとしたのもつかの間、声が聞こえた。 「ああ……。 君はいい匂いもするし、声もかわいいんだねえ……」 聞いたことない、まとわりつくような低い声。 その瞬間、恐怖で俺の体は動けなくなってしまった。 「次は〇〇、〇〇、△△線をご利用の方はお乗り換えです」 不意に聞こえたアナウンスにハッとした。 降りる駅だ!と頭ではわかっているのに体が動かず、痴漢野郎の手は尻を鷲掴みにしてきた。 そうしているうちに扉が開き、人が流れ出す。 なのに、俺の足は動けない。 なんで? どうして? 恐怖で体が強張り、喉もカラカラになっていく。 それを同意と捉えたのか、痴漢野郎の手が尻から前に蠢いた。 もうダメだ、と思ったその時不意に手を引かれ、気づけば俺は会社の最寄り駅のホームに立っていた。 助かった…のか? 「……っ!!」 そう思えた瞬間、俺はその場で膝から崩れ落ち、動けなくなっていた。

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