12 / 14

12

空腹にコンビニおにぎりはご馳走だった。 ちっさいガラステーブルにビール缶が四つとツマミが並ぶ。 電話で話してたようなことは、お互いはなさなかった。 居酒屋で話すみたいにくだらない話をしながら、ゆっくりとビールを一口飲む。 今日一日のことなのにいつもと違いすぎた。 翔太と話すまでパニクってたんだなって、頭の片隅でちょこっと思う。 いつもみたいに怒って、笑って。 時々ビールを一口飲めば、いつもと変わらない俺に戻っていくみたいだ。 まだクーラーのいらない夏の夜は、ひんやりとした空気がちょっと肌寒い。 楽しいほろ酔いの空気には、ひんやりするくらいが酔いが回り過ぎずちょうどいい。 ベランダが額縁みたいで、雲のない夜空に半月が静かに輝き、絵みたいだな、と柄にもないことを思っていた。 「ほんと…ありがとな。」 会話が途切れたとき、ふと零れた。 「翔太がいてくれてよかった。 めっちゃ助かったよ。」 ああ、俺たぶん酔ってるな。 普段絶対言わないよな、こんなこと。 でも、今日だから余計思う。 だからこそ今言いたかったんだよな。 「…俺が、これから毎日守ってやんよ。」 照れたようにそっぽを向き、頭をぐしゃぐしゃ撫でながら翔太は言ってくれた。 でも。 「いや、なんとかしようと思ってさ。」 「…はぁぁぁぁああ!?」 ちょっと手を退けながら真顔で言ったら、超レアな照れ顔の翔太は思った通りこっちを向きながら叫んだ。

ともだちにシェアしよう!