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空腹にコンビニおにぎりはご馳走だった。
ちっさいガラステーブルにビール缶が四つとツマミが並ぶ。
電話で話してたようなことは、お互いはなさなかった。
居酒屋で話すみたいにくだらない話をしながら、ゆっくりとビールを一口飲む。
今日一日のことなのにいつもと違いすぎた。
翔太と話すまでパニクってたんだなって、頭の片隅でちょこっと思う。
いつもみたいに怒って、笑って。
時々ビールを一口飲めば、いつもと変わらない俺に戻っていくみたいだ。
まだクーラーのいらない夏の夜は、ひんやりとした空気がちょっと肌寒い。
楽しいほろ酔いの空気には、ひんやりするくらいが酔いが回り過ぎずちょうどいい。
ベランダが額縁みたいで、雲のない夜空に半月が静かに輝き、絵みたいだな、と柄にもないことを思っていた。
「ほんと…ありがとな。」
会話が途切れたとき、ふと零れた。
「翔太がいてくれてよかった。
めっちゃ助かったよ。」
ああ、俺たぶん酔ってるな。
普段絶対言わないよな、こんなこと。
でも、今日だから余計思う。
だからこそ今言いたかったんだよな。
「…俺が、これから毎日守ってやんよ。」
照れたようにそっぽを向き、頭をぐしゃぐしゃ撫でながら翔太は言ってくれた。
でも。
「いや、なんとかしようと思ってさ。」
「…はぁぁぁぁああ!?」
ちょっと手を退けながら真顔で言ったら、超レアな照れ顔の翔太は思った通りこっちを向きながら叫んだ。
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