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「正真」20

 まだ入学して半年も経っていないせいか、神近くんの堂々とした雰囲気とは異なって初々しさがにじみ出ていた。きちんと締められたネクタイ。黒い頭髪。もちろん、ピアスなどしていなかった。  服装の校則が緩いとはいっても、基本的に一年生は目をつけられるからという理由で控える生徒が多い。彼も無難な学校生活を送ろうと思っている一員なのだろう。 「あのさ、神近くんって子知ってる?」  各学年のクラスが四クラスあるこの学校は、よっぽどの接点がないと知らない可能性があった。 「……ええ、知ってますよ」  彼はそう言うと、困ったような表情を浮かべる。 「パズル同好会の部室に鍵がかかっててさ……もしかしたら神近くんがもっているかもしれないんだよ。神近くんの連絡先知らないかな?」  決して不審者じゃないと思わせるために、僕は「実は入部希望者なんだよね」と付け足す。  それなのにも関わらず、「えっ!」と驚きの声を上げ、唖然とした表情を浮かべている。 「えっ? 何か問題でもあるの?」  彼の予想外の反応に僕まで、驚きの声を上げてしまう。 「いや……問題っていうわけじゃないんですけど……」  気まずそうに視線を彷徨わせる彼を、僕は首を傾げた。

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