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「訪問」10
「さっきの女性、もしかしたらお姉さんに憑いてた奴かもしれないので」
「えっ……」
僕が絶句していると、神近くんはベッドの縁に腰掛けて玄関の方に視線を向ける。
「本当にそうかは分かりませんが、霊が訪問してくる事は今までになかったので……」
神近くんの視線が、僕に向けられる。
「……僕が連れてきちゃったって事?」
僕は唾を飲み込み、神近くんに伺うように問いかける。
そうだとしたら大変な事だった。神近くんが苦労に苦労を重ねて探した、心霊要素のないアパートに面倒事を持ち込んでしまったのだから……
「……だから来なくて良いって、言ったんですけど」
神近くんの呆れたような視線に、僕は唇を噛みしめる。神近くんの言葉を無視してまで来てしまった僕は、責められても当然だ。
「……ごめん。どうしたら良いの?」
「無視していればそのうち諦めるんじゃないんですか。先輩、こういうの詳しいんじゃないんですか?」
「わからないよ……怖い話とかでよく見る内容ではあるけど、その後どうなったかまでは書かれてないから……」
いくらオカルト好きだからと言って、対処法までは調べたことがなかった。多少なり脚色のある話や作り話がほとんどなオカルト業界だ。僕もフィクションとして楽しんできたこともあって、実際に経験した時の事は考えもしなかった。
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