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「訪問」12

「先輩がオカルトを楽しむように、俺も先輩が怖がってたり怯えてる姿を見るのが好きなんです」 「……神近くん」  僕は胸が苦しくなってしまう。本心でそんな事を言っているのであれば、悪趣味すぎる。 「何が違うんです? 先輩が元々生きていた人間を、怖がって楽しんでいるのと……ある意味、愚弄しているようなもんじゃないですか」 「そんな事は――」  僕はそこで言葉に詰まってしまう。確かに神近くんの言っている事も一理ある。そういうつもりがなくとも、相手からしてみれば不快なのかもしれない。  神近くんは僕を見下すような目で見ている。その冷めたような瞳には、微かに侮蔑の色が混じっていた。 「……ごめんなさい」  僕はいつの間にか涙を零していた。高校生にもなって、後輩に論破されて泣くなんてみっともない。頭では分かっているのに、一度流れてしまうと次から次へとこぼれ落ちてしまう。 「泣かないでくださいよ。先輩のくせに」  神近くんが眉間に皺を寄せる。僕はコクコクと頷くも、なかなか涙が止まらない。見かねたのか神近君が「俺も言い過ぎました」と言いながらティッシュを渡してくれる。 「ありがとう……」  僕はティッシュを受け取り涙を拭いていく。とんだ恥さらしになってしまったが、神近くんにしてみれば、元より僕なんか頼りない先輩にしか見えていなかっただろう。 「……そろそろ帰るね」  僕はそう言って、重い腰を上げる。 「大丈夫なんですか?」  神近君が胡散臭そうな顔で見上げてくる。まるで一人で帰れるのか、とでも言いたげだ。

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