81 / 259

「訪問」19

 気付がくと部屋は真っ暗で、すぐ目の前に神近くんの背中があった。驚いて僕は体を起こすと、ブランケットが滑り落ちる。  窓から差し込む街灯の淡い光が部屋を照らし、微かな車の走り去る音が聞こえた。ここが神近くんの家なのだと、急に居心地の悪さを覚え僕は膝を抱える。  まさか神近くんの家に泊まる事になるとは、思ってもみなかった。周りが聞いたらきっと仰天するだろう。  でも、僕なんかですらこうして神近くんに近付けたのだ。きっとそのうち、神近くんにも親しい友人が出来るかもしれない。僕はそれを一瞬だけ、嫌だなと思ってしまう。  胸に微かな痛みが走り、慌ててかぶりを振った。なんでそんな非道な事を思ったのだろうか……  ちらりと視線を神近くんに向けると、静かに寝息を立てて眠っていた。無防備な姿を曝け出し、僕の隣で眠る神近くん。寝姿までサマになっている姿に、嫉妬ではなく何故か胸の動悸が速まってしまう。クーラーが付いていて涼しいはずなのに、僕は身体中が急速に熱を帯び始め、居心地悪く視線を逸らした。  僕は今までに、恋愛経験が無かったわけじゃない。中学時代にクラスで好きな女の子がいた。

ともだちにシェアしよう!