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「訪問」20

 その子は仲の良い友達と話す時以外は、席で読書をしているような静かな性格だ。長い髪が窓から吹き込む風に揺れる姿は儚げで、まるで一枚絵でも見ているかのようだった。僕は斜め後ろの席からその子を視界に入れては、一人居心地の悪さを感じて目を逸らすを繰り返す。  そんな奥手な僕はその子には告白するには至らず、僕の淡い初恋は卒業と同時に終止符を打ったのだ。  だから何となくこれが、恋心である事は自覚していた。でもまさか相手が同性であるとは想像もつかなかったし、初恋の相手とは似ても似つかない。  もしかしたら吊り橋効果というやつなのだろうか。神近くんといる時は何かと心霊体験をして、緊張状態が続いている。脳が錯覚を起こしていて、恋と間違えているという可能性も否定できない。  モヤモヤとした気持ちで思考を巡らせていると、甲高いインターホンの音が静まり返った部屋に響き渡った。  突然のことに僕は小さく悲鳴を上げ、恐る恐る視線を部屋の入り口に向けていく。ベッドの上から丁度正面に、玄関の入り口が見えてしまう。  煌々と光を放っているモニターが、視界の端に映り込んで背筋が凍り付く。奇跡的に壁の横に備え付けられていて、ここからだと何が映っているか分からないのがまだ救いだった。 「か、神近君……」  僕は震える声で名前を呼びつつ、神近君を揺すった。  神近君は「……なんですか」と不機嫌そうにゆっくりと体を起こすと、再びピンポーンと甲高い音が鳴り響く。僕は思わず、神近君の背に隠れるようにしてシャツを掴んだ。

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