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「訪問」21
神近君がスマホを手に取り、視線をやると「深夜二時半かぁ」とポツリと零した。
またあの女の人なのだろうか。そうだとしたらこんな時間にまで来るなんて、狙ってきたも同然だ。
「か、神近君……どうしよう」
僕は神近君の背に囁くように問いかける。
「どうするもこうするも、諦めるまで待つしかないでしょ」
「……そうだけど」
そうこう話している間にも、インターホンが何度も鳴り響く。僕は神近君の背に顔を埋め、ガクガクと震えていた。
ぴたりと音が止まり、沈黙が流れ出す。行ったのかと僕はホッとして息を吐きだすと、ガシャという音が聞こえてくる。
なんだろうと思っていると、今度は連続してガシャガシャガシャと玄関から音が聞こえてくる。
「ひぃっ!!」
僕が悲鳴を上げると、神近君が振り返って僕を押し倒すなり手で口を塞がれる。
「そんなにキスされたいんですか?」
半泣きの僕はパニックになったように、肯定も否定もできず涙で潤む視界で神近君を見つめる。神近君は険しい顔つきで僕を見下ろしていた。
――ダンダンダンダン
今度はドアを叩く音に変わり、僕は体が跳ね上げくぐもった悲鳴を上げる。
神近君が眉間に皺を寄せると、「どうしようもない人ですね」と言って塞いでいた手を離す。
解放された僕は荒い息を繰り返していると、神近君の顔が近づき唇が重なる。僕はその瞬間、恐怖で震えていたのにも関わらず、期待に胸がうずいてしまっていた。
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