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「訪問」23

「霊がいないと、先輩はこういうことしないんですか?」 「そうじゃないけど……付き合ってもいないのにするのはどうなのかなって……」  僕は神近君から視線を逸らす。こういう流れになってはいるが、僕たちは恋人同士ではない。不本意な動機から始まったキスだったが、それ以上ともなれば話は別だ。 「へー、そういうのにこだわる人なんですね」  驚いているような納得したような口調で神近君が、僕の体から身を引いた。 「そのわりには、積極的でしたけどね」 「っ……」  僕は痛いところを突かれ、恥ずかしさに頬が熱くなる。 「か、神近君はさ……こういうの誰とでもするの?」  僕は上体を起こし、ぽつりと呟く。神近君の淀みない動きからして、手慣れている感じが否めなかった。 「先輩だからです」 「えっ?」  僕は驚いて神近くんの顔を見つめる。神近くんは口元を僅かに歪めて、僕を見つめ返す。 「先輩にしかこういう事しませんよ」  まさか神近くんの口からそんな言葉が出てくるとは、思っても見なかった。僕は全身がカッと熱くなり、恥ずかしさから再び視線を俯かせる。  神近くんの言っている意味は、僕に対する好意なのだろうか。期待半分、不安半分だった。昼にキスの事を聞いた時も揶揄われたのだから、どうしても半信半疑になってしまう。

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