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「訪問」24

 さっきまで吊り橋効果云々で悩んでいたけれど、結局のところ僕の方は神近くんに好意があるのはさっきのキスで証明された。  ならば神近くんが僕に対して少しでも好意があるのなら、これはチャンスなのかもしれない。中学時代、もっと話しかければ良かったとか、卒業式に告白すれば良かったと悔やんだ苦い思いが込み上げてくる。  この機会を逃すまいと僕が口を開きかけた時、「嘘ですよ」と神近くんが小さく笑った。  全身の熱が何処かに流れ落ちたように、僕は血の気が引いていく。開いた口を固く結び、僕は顔を顰めた。  昼の時はこんな気持ちにはならなかった。それどころか、ホッとしていたはずだ。でも自覚してしまった今、神近くんの冗談を素直に受け入れることが出来なかった。 「なんで先輩、そんな顔してるんですか?」  僕の険しい表情を察してか、神近君が笑うのを止めて僕の顔を覗き込む。 「なんでって……そんなこともわからないの?」  僕はそう言って神近君に背を向け、膝を抱えると顔を埋めた。胸がじくじくしたような痛みが襲い、涙を零さまいとして唇を強く噛み締める。 「先輩……怒ってるんですか?」  背後から声を掛けられるも僕は返事をせずに、むつりと黙り込む。神近くんは最低だ。何度も人の気持ちを踏みにじって、笑えるなんてありえない。さすがに僕だって限度ってものがある。

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