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「訪問」27
「別に男が好きってわけじゃないよ。僕だって正直、動揺してるんだから……」
「俺だから……ですか?」
僕は口にはせず、黙って頷く。神近くんが茶化したら今度こそ、僕は部屋を出るつもりだった。まだ日が出てなくて外は暗いが、あと一時間もすれば明るくなってくるはずだ。
「……でも、先輩。怖がりじゃないですか。俺と一緒にいたら、怖い事ばかり起こるかもしれませんよ」
確かに神近くんは見える人間なせいか、霊も寄って来やすいだろう。気付いてくれる人間に、ついて行くとよく聞きもする。確かに怖いし、僕の身が持つ分からない。それでも神近くんの傍にいたい、放っておけないと思ってしまう。
「そんな事分かってる。だからって、本当に嫌だったら神近くんに近づかない……」
「俺だって——」
神近くんが呻くように声を発した。
「先輩だから助けたんです。じゃなきゃ、熱出してまで除霊なんかしませんから」
「えっ! どういう事? そんなの聞いてないよ」
僕は驚いて神近くんに詰め寄るも、神近くんはきまり悪そうに僕から視線を逸らしてしまう。
確かに僕や姉を除霊した翌日に、具合が悪くなっていた。でもまさか、除霊が原因だったとは思ってもみなかった。
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