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「訪問」28
「さすがに体調崩すような事なら、僕は断ってたよ! なんでそこまでして……」
「断るのを分かってたから言わなかったんです。先輩、そういうのこだわりそうだから……」
「こだわるとかじゃなくて、そこまでして助けてくれたからって、僕は神近くんに何もしてあげられないよ?」
熱が出るだけならまだしも、神近くんは二日間も学校を休んでいる。それはよっぽど酷かったという事だろう。僕を祓った後にまだ完全に回復していないのにも関わらず、姉のも祓ったせいなのかもしれない。
「だから代償を払ってくださいって、俺は言ったんです。でも二回目の時は俺が勝手にやった事なので、先輩が納得するように入部祝いと言ったまでです」
神近くんは静かに嘆息を付く。
「……神近くん」
やっぱり神近くんは根本的には優しいのだろう。ちゃんと素直になれば、周りとだってちゃんと馴染めるはずだ。
「……もう寝ましょう」
神近くんはそう言って、僕に背を向けて横になった。
拗ねているのか、照れているのか分からなかったけれど、僕は何だか神近くんを可愛いなと思ってしまう。僕も横になると、そっと神近くんの腰に手を回す。
「暑いんですけど……」
神近くんにぽつりと呟かれ、僕はハッとして腕を引こうとすると逆に腕を掴まれてしまう。
「やっぱり暑いって言っても知りませんから……」
神近くんの照れ隠しに、僕は小さく笑って腕に力を込めたのだった。
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