90 / 259

「訪問」28

「さすがに体調崩すような事なら、僕は断ってたよ! なんでそこまでして……」 「断るのを分かってたから言わなかったんです。先輩、そういうのこだわりそうだから……」 「こだわるとかじゃなくて、そこまでして助けてくれたからって、僕は神近くんに何もしてあげられないよ?」  熱が出るだけならまだしも、神近くんは二日間も学校を休んでいる。それはよっぽど酷かったという事だろう。僕を祓った後にまだ完全に回復していないのにも関わらず、姉のも祓ったせいなのかもしれない。 「だから代償を払ってくださいって、俺は言ったんです。でも二回目の時は俺が勝手にやった事なので、先輩が納得するように入部祝いと言ったまでです」  神近くんは静かに嘆息を付く。 「……神近くん」  やっぱり神近くんは根本的には優しいのだろう。ちゃんと素直になれば、周りとだってちゃんと馴染めるはずだ。 「……もう寝ましょう」  神近くんはそう言って、僕に背を向けて横になった。  拗ねているのか、照れているのか分からなかったけれど、僕は何だか神近くんを可愛いなと思ってしまう。僕も横になると、そっと神近くんの腰に手を回す。 「暑いんですけど……」  神近くんにぽつりと呟かれ、僕はハッとして腕を引こうとすると逆に腕を掴まれてしまう。 「やっぱり暑いって言っても知りませんから……」  神近くんの照れ隠しに、僕は小さく笑って腕に力を込めたのだった。

ともだちにシェアしよう!